会社でお仕事をしていると、隣のシマから随分とこなれた感じのゴスペルが聴こえてきた。どんなゴッドおばさんが歌っているのかな? なんて思いつつ仕事を進めていると、曲調がアシッドジャズっぽいものからR&B、ソウルに展開していく。そのいずれも堂に入ったものだし、とても気になって誰なのか確認した。それが本作との出会い。そうか、アポロシアターのアマチュアナイト準優勝か。新人と聞いてビックリだが実力は折り紙つきだ。
intoxicate (C)タナカシンメイ
タワーレコード(vol.107(2013年12月10日発行号)掲載)
世界レヴェルで勝負できることを証明
ライヴなどを通して、その圧倒的な歌ぢからと表現力で目利きたちを唸らせているNao Yoshioka。ブライアン・オーウェンスとの米国ツアーのような場を与えられても怯むことなく対等に渡り合えるスキルと度胸の良さには、心底あっぱれと言うしかない。日米蘭の3国で録音された彼女のファースト・アルバム『The Light』には、そのブライアンもモータウン調の“Spend My Life”を提供。シャーマ・ローズのアレンジによるニーナ・シモン曲カヴァーを筆頭に、ネオ・ソウル的な妙味のあるバック演奏のもと、英語詞の曲をフェイクを交えつつ抜群の安定感で歌い上げていく仕上がりは前評判通りの完成度で、“I'm Not Perfect”なんて曲名も謙遜に感じられてしまうほど。チャーチなオルガンや黒田卓也のトランペットが雰囲気を高めるエタ・ジェイムズでお馴染みの“At Last”のほか、サム・クック名曲やゴスペルの定番など難易度の高い曲をいとも簡単(そう)に歌いこなすあたりは、アポロ・シアターで喝采を浴びた(アマチュア・ナイト準優勝)時の姿が眼前に浮かんでくるかのようだ。オーリーやダニー・エリオットらが書いたファンク・ロック調や、福原美穂が作曲に関与した表題曲などのオリジナルも上々。2012年、“Make The Change”で世界をめざした彼女が世界レヴェルで勝負できることを証明した、出来すぎの一作だろう。一時の熱狂で終わらせたくない、愛すべきレディー・ソウルの登場を祝したい。
bounce (C)林剛
タワーレコード(vol.361(2013年11月25日発行号)掲載)
胆の据わった、大器のファースト・アルバム
Nao Yoshioka。資料によると〈日本のアリシア・キーズ〉と賞賛されているようだが、歌い手としてのタイプはまったく異なる。そういった賛辞にいまどれほどの意味があるのかはさておき、所属するSWEET SOULのコンピやmabanuaとのコラボでこれまでも密かに注目されてきた歌唱力が、今回の『The Light』においては、より強く投影されたライヴ・フィーリングによって文字通りの輝きを獲得しているのがわかる。オランダのシャーマ・ローズがヴォーカル・アレンジ面からもサポートし、USからはブライアン・オーウェンス、他にもニュージーランドのサシャ・ヴィーら海外勢がレーベルの絆もあって尽力、一聴してルーサーを想起させるタイトル・トラックのライティングには福原美穂も名を連ねるなど、多国籍な背景を持つ作品ではあるものの、いわゆる国際色豊かというよりはNao Yoshiokaの放つべきワンネスにそれぞれが貢献したという感じで、総体の雰囲気にそういう意味でのヴァラエティーがあるわけではない。言い換えれば、何を誰と歌っても胆の据わった表現にブレはないということだ。願わくばもっとオリジナルの曲を聴いてみたいと思ったりもするものの、まだまだこれが最初の一歩。次作以降への期待も膨らむ大器のファースト・アルバムだ。
bounce (C)出嶌孝次
タワーレコード(vol.361(2013年11月25日発行号)掲載)
だから、詞の意味は全て分からなくても曲に込めた思いは伝わってくる。とても心地良い。
力強く安定した歌声から、各曲の厳かさや喜びなどがストレートに伝わってくる。
軽々と伸び続ける歌声に、別世界に誘われてしまうような感覚に襲われる。
その迫力に聴くたび心が揺さぶられてしまう。そして、全てが忘れられ、心が軽くなる。