レゲエ、エレクトロ・ソウル、ヒップホップ、ジャズ、アコースティック・ロック――あらゆるジャンルの境界を超えて旅するベルギー生まれのサウンド・コスモポリタン、セラ・スー。2011年にリリースされたセルフ・タイトルのデビュー・アルバムから約4年、彼女のニュー・アルバムが到着した。
ここ日本でも輸入盤で注目を集め、2013年のサマーソニックで初来日。そのエネルギッシュでソウルフルなパフォーマンスを観る者を魅了したことを記憶している人も多いに違いない。
セカンド・アルバムとなる本作『REASON』で、セラ・スーは自身の真なる音楽的アイデンティティを見つけたという。ベルギーだけでなく、ロンドン、ジャマイカ、そしてロサンゼルスでレコーディングを行った彼女は、二人の“今が旬”なプロデューサー、リトル・ドラゴンやケンドリック・ラマーとの仕事で知られる、デーン・ロビン・ハンニバルと、ハイムやチャイルディッシュ・ガンビーノなどを手掛けたことで知られるスウェーデン人プロデューサー、ルドウィグ・ゴランソンと手を組んだ。またルドウィグ・ゴランソンとは、彼女にとって初めてのラヴ・ソングとなる「Together」を一緒にロサンゼルスで共作したという。
トリップ・ホップ調な「Fear Nothing」では、マッシヴ・アタックの「Dissolved Girl」の共作者でも知られるロンドン在中のマット・シュワルツとチーム・アップ。彼と曲を共作し、プロデュースも彼が手掛けている。そしてロビン・ハンニバルは、セラ・スーのアコースティック・バラードが持つ生々しい美しさに、アフロ・アメリカンな要素を加えることに成功した。
この他アルバムには、2012年、ホイットニー・ヒューストンが亡くなった晩に作られたという「Alone」や、そのホイットニー・ヒューストンやアレサ・フランクリンとの仕事で知られるトロイ・テイラーとジャマイカで共作・プロデュースした「Sadness」などが収録されている。
「今作で初めて、頭の中にある音楽の万華鏡を纏めるのにプロデューサーがどれだけ力になってくれるのかを知った」と語るセラ・スー。エレクトロソウルやヒップ・ホップ、アコースティック・ロックやジャジーな雰囲気まで、様々なサウンドが一つに溶け合った音楽の坩に、また新たな色が加わった。
発売・販売元 提供資料(2015/03/30)
エイミー・ワインハウス以降の世代感を備えたシンガー・ソングライターとして、ロックスあたりと並び称される格好でベルギーから登場したセラー・スー。処女作『Selah Sue』はパトリスやファーホットといったドイツ人脈の尽力が光る逸品だったが、今回は制作陣を一新してロビン・ハンニバルとルドウィグ・ゴランソンを中核に据え、スモーキーな歌声の豊かさを前とは違う角度から届けてくれている。ブラコン調の伸びやかなグルーヴが快い先行シングル"Alone"(ホイットニーが急逝した夜に作ったそう)をはじめ、持ち前のレゲエ趣味を埋め込んだトリップ・ホップ"Fear Nothing"などを振り幅の両端に、ロビンらしいアンビエント系でもゆったり浮遊。ブルージーなレトロ路線も流石の味わいで、今回も文句ナシ!
bounce (C)出嶌孝次
タワーレコード(vol.378(2015年4月25日発行号)掲載)