2014年7月13日、84歳で亡くなった巨匠ロリン・マゼール。マゼールが亡くなる5か月前にミュンヘン・フィルと演奏したヴェルディ「レクイエム」が登場します。
オペラも含めて幅広いレパートリーを網羅していたマゼールは、ヴェルディ作品でも「ルイザ・ミラー」(コヴェント・ガーデン、DG)、「椿姫」(ベルリン・ドイツ・オペラ、デッカ)、「アイーダ」(ミラノ・スカラ座、デッカ)、「オテロ」(ミラノ・スカラ座、EMI)のセッション録音による全曲盤のほか、クリーヴランド管弦楽団とはバレエ音楽集などを録音しており、「ファルスタッフ」はウィーン国立歌劇場でのライヴ録音がCD化されていますが、古今の宗教曲でも指折りの名曲「レクイエム」は、大規模な作品を得意としたマゼールとしては珍しく、なぜか録音する機会がありませんでした。1990年ヴェローナでのモスクワ・フィル、パヴァロッティと共演したライヴ、トスカニーニ没後50年を記念してトスカニー響と共演したライヴの2種の映像がDVD化されたことがあるのみで、LP、CD時代を通じて録音はありませんでした。
その意味で、今回CD化されるヴェルディ「レクイエム」は、2014年4月以降の演奏会をキャンセルしたマゼール最晩年の演奏ということも含めて、そのギャップを埋めるうえで大きな意味合いを持つリリースといえるでしょう。ミュンヘン・フィルとは、ソル・ガベッタとのショスタコーヴィチ、ブルックナーの交響曲第3番に続く3枚目の録音となります。(1/2)
ソニー・ミュージック
発売・販売元 提供資料(2015/02/27)
2013~14年のミュンヘン・フィルのシーズンでは、マゼールは秋に「ツァラトゥストラ」や「アルプス交響曲」など、お得意のR.シュトラウス作品や、アニヴァーサリー・イヤーにちなむブリテン「戦争レクイエム」や「ピーター・グライムズ~4つの海の間奏曲」、年末~年明けのベート-ヴェン「第9」などを指揮、さらに2月にはヴェルディ「レクイエム」のほか、シベリウスの交響曲第2番、シューマンの交響曲第4番などを取り上げています。4月以降は公演をキャンセルし、さらにミュンヘン・フィル音楽監督のポジションからも任期半ばで降板することを表明したので、このヴェルディ「レクイエム」はマゼールによるほぼ最後の演奏記録の一つということになります。
ソリストも現在望みうる最高の布陣というべく、バレンボイム指揮ミラノ・スカラ座とのヴェルディ「レクイエム」(デッカ)でも圧倒的な名唱を示したソプラノのアニア・ハルテロスをはじめ、メゾ・ソプラノのダニエラ・バルチェッローナ、バスのゲオルグ・ツェッペンフェルトのほか、2013年の新国立劇場での「リゴレット」のマントヴァ公で高く評価されたテノールのウーキュン・キムが起用されています。
演奏は、これら4人のソリストたちも、大編成のオーケストラ・コーラスも全てがマゼールに敬意を払い、一点の乱れもない素晴らしいハーモニーを聞かせています。考え抜かれたテンポ。ピアニッシモからフォルテッシモまで滑らかで均一な響き、高度にコントロールされた合唱。マゼールの正攻法なアプローチに聴衆たちは度胆を抜かれことでしょう。独唱者たちの比類ない歌唱も聴きもので、完璧な感情表現とラテン語の発音には感嘆せざるをえません。すでに神の領域に一歩踏み込んでいるかのような迫真の演奏。瞑目して聴きたいものです。この演奏の約4か月前に同じホールで演奏されたヤンソンス&バイエルン放送交響楽団による精神的なアプローチの名演(BR Klassikでリリースずみ)との聴き比べも興味深いところです。(2/2)
ソニー・ミュージック
発売・販売元 提供資料(2015/02/27)
This recording is a product of Lorin Maazel's brief tenure as chief conductor of the Munich Philharmonic Orchestra at the end of his life, and it may have been his last recording. Certainly a point in its favor is the willingness of an aging conductor to seek out new interpretive ideas in late life. Whether it entirely holds together may be a matter of taste, but it doesn't sound like any other example among the vast catalog of Verdi Requiem recordings, and there's much to like. Briefly, Maazel attempts to forge a reading that offers lows to match the work's big highs like the mighty Dies Irae and its timpani strokes, which are given at full power and full speed. Does that gather power after the quiet, almost imperceptible opening of the work (which, to be fair, will give a good opportunity to show off an expensive audio setup)? Maybe, but Maazel's tempi are often idiosyncratically slow, and it's hard to detect a real arc in the work. Then again, the work of all four soloists, especially soprano Anja Harteros, is very strong, and they make an impressive effort to fill the large spaces Maazel lays out. The live recording from Gasteig Munich is also clear in a work that is notoriously difficult to capture in live performance. Perhaps it is a recording that will yield more information to repeated hearings.
Rovi