超絶技巧のマンドリニスト、クリス・シーリーを中心に結成された技巧派アメリカーナ/ブルーグラス・バンド、パンチ・ブラザーズ。彼らにとって2012年の『WHO'S FEELING YOUNG NOW?』に続くニュー・アルバムが発売される。
2013年映画ファンのみならず、多くの音楽ファンも惹きつけた、コーエン兄弟の映画『インサイド・ルウェン・デイヴィス』。そのサウンドトラック、及び映画にインスパイアされた一夜限りの音楽イベント、“ANOTHER DAY, ANOTHER TIME”に出演した彼ら。そこで再びTボーン・バーネットと仕事をすることとなったパンチ・ブラザーズの面々は、彼を新作のプロデューサーに迎えることを決めたという。そして2013年の夏、パンチ・ブラザーズとTボーン・バーネットは、ハリウッドにあるオーシャン・ウェイ・レコーディング・スタジオで、バンドの各メンバーが冬から春にかけて書き溜めていた楽曲のレコーディングを始めたのだった。
本作に収録されている楽曲のいくつかには、「現代社会」に対するメンバーの視点も入っているという。クリス・シーリーはその点についてこう語っている:「僕らはしばしばショウやソングライティング・セッションの後にバーに行くんだ、他の人たちと交流するためにね。そういった場所で、僕らみたいな人――携帯電話で相手にどれほどそこにいたかったとか話したり、実際そこにいる人たちにメールを送ったりしているんだ。そこに、その場にいたある人が好きな音楽が聞こえてきて、その人が他の人もその曲が好きだと気付いたとする。そこで二人は一緒にその曲を歌うかも知れない、そうなれば、その瞬間はスピリチュアルなものだと言えるし、共通の体験とも呼べるかも知れない。二人は体感的な交流をしていると言える――それは感情の共有とも呼べるものだ。僕たちの曲の多くは、その点を掘り下げている。現代において、我々はどうやって同胞とこの美しい、三次元の体験を僕らは作り出すことが出来るのかってね」
レコーディング・セッションに入る前、クリス・シーリーとフィドル担当のゲイブ・ウィッチャーはTボーン・バーネットと会い、彼もまた、同じようなことを考えていたことを知ったのだった。実のところ、Tボーン・バーネットは、テクノロジーと人間の相互作用について、南カリフォルニア州立大学で講演を行ってきたという。そのことについて、ゲイブ・ウィッチャーはこう語っている:「シーリーと僕は顔を見合わせて“信じられないよ、僕らが作っている曲と全く同じことじゃないか”って言ったんだ。だから、これは思いがけず、パーフェクトな組み合わせだったんだ」
マンドリン、フィドル、バンジョーにベースとギター・・・ブルーグラスの伝統的な楽器で描き出される現代の三次元的音楽体験。インディー・ロック、ブルーグラス、フォーク、ジャズ、クラシックなどありとあらゆる要素をその血に取り込んだ彼らが示す、現代アメリカーナ・ミュージックの新しき道がここにある。
発売・販売元 提供資料(2014/12/15)
マンドリン奏者クリス・シーリーを中心とする技巧派バンドの新作。マンドリン、フィドル、バンジョーなどブルーグラスの伝統的な楽器を用いつつ、インディー・ロックなどさまざまなエッセンスを消化して紡ぎ出されるサウンドは新鮮かつ驚くほどにポップだ。少し皮肉っぽさのある甘い歌声が、弦楽器たちのクリアーな音色のなかで美しく伸びていく。周到に作り込まれた遊び心溢れるアレンジと、演奏やヴォーカルから滲み出るロック・テイストのおかげで、"郷愁"や"優雅さ"の方向に行き過ぎない超強力なメジャー感が成立。チェンバー・ポップ好きからひねくれロック・ファンまで幅広く魅了しそう!
intoxicate (C)戸畑春彦
タワーレコード(vol.114(2015年2月10日発行号)掲載)
ブルーグラスの歴史に残る名盤だと思います。