妖しくも美しく、様々な表情で魅了するヴォーカルとピアノ…才能あふれるフランチェスカ・タンドイの魅力がたっぷりと詰まった1枚。ダウン・タウン・ブキウギ・バンド、1977年(おいおい、もう40年前かよ!)の大ヒット曲"サクセス"をご存知か?夫の宇崎竜童が曲をつけた阿木耀子の歌詞は、いつも女心を描き出して鮮やかなのだが、この曲ではかく歌う。曰く、「女は昨日の顔で待つ」「女は今日の顔で泣く」「女は明日の顔を持つ」。困るよな、こういうのが。何です?女性は昨日・今日・明日で顔が違う?じゃあどれが本当なのよ?貴女は「全部ホント」ときっと仰るであろう。デビュー後、あっという間に来日公演が決定し、言わばその記念盤として制作されたFrancesca Tandoiのセカンド・アルバムを聴いてそんなことを考えた。前作は基本的にピアノ・トリオとしての作品で、うち、数曲でヴォーカルが披露されている。なので、ヴォーカルはピアニストの余技というところか、と思っていたら、今度はそのバランスが逆転、収録曲の殆どが彼女のヴォーカルのショウケースとなっている。となると、彼女はピアノも弾けるヴォーカリスト…?いや、そうした「縛り」みたいなものこそ、男なる身のわがままなのか。だって、どちらも良いからね。FrancescaはFrancesca、それだけのことよ、そんな彼女の囁きが聞こえる気もする。でも、たとえばブロッサム・ディアリーのように、ヴォーカル・スタイルとピアノがキレイに一致、という感じでもない。そこがまた魅力で、数々のスタンダード・ナンバーでキュートなヴォーカル(という表現が良く似合う)を聴かせる一方、前作に引き続き、自作曲ではブルージーなピアノ・ソロを楽しませてくれる。世の殿方よ、所詮我らはいくつもの顔を持つ女性に翻弄されるが運命なのだ。ならはそれを歓びとしようではないか。妖しく美しい、Francescaの音楽に導かれながら。(Text by 北見柊:ライナーノーツより)
発売・販売元 提供資料(2014/12/02)