新アルバム『ビヨンセ』、オーディオCDのみのリパッケージ盤
全米アルバム・チャートで3週1位を獲得し、104カ国のiTunesで1位に輝いたビヨンセの新アルバム『BEYONCE』(通算5作目)。オリジナル盤では、収録楽曲すべてに呼応するミュージック・ビデオが収録されていたが、今回アルバム『BEYONCE』のオーディオCDのみを収録したリパックが登場! 2013年12月13日に何の前告知もないまま一斉サプライズ配信され、世界を騒然とさせたことでも大きな話題を呼んだ今作からは、夫ジェイ・Zをフィーチャリングした「ドランク・イン・ラヴ」を始め、「XO」「パーティション」といったヒットも次々に誕生。ほかにもファレル・ウィリアムス、ティンバランド、ジャスティン・ティンバーレイク、フランク・オーシャン、テリウス・ナッシュ、シーア等錚々たる面々が名を連ねているほか、愛娘ブルー・アイヴィーをフィーチャーしたトラックも収録している。
発売・販売元 提供資料(2014/11/10)
Billboard - "[O]nce the initial novelty and shock wears off of Beyonce's impressive stealth-release feat, the brilliance and creative audacity of the album itself can sink in."
Mojo (Publisher) (p.94) - 3 stars out of 5 -- "There are thrilling moments...[with] spoken-word segments and a leftist R&B backdrop."
Paste (magazine) - "[With] wonderfully adventurous and of-the-moment sonics..."
Pitchfork (Website) - "The album is brassy but elegant....It finds Beyonce shifting gears to pull off her most explicit and sonically experimental music to date, exploring sounds and ideas at the grittier margins of popular music."
Rovi
ジェイZの『Magna Carta... Holy Grail』と同じく作品の外枠のことばかり語られがちなのが残念な、ビヨンセのおよそ2年半ぶりのニュー・アルバム。曲ごとに個別のヴィジュアルを制作する試みは前作『4』でも行われていたものの、それぞれMVまで制作して同梱するというこだわりの程はサウンドそのものの隅々まで行き届いた目配せにも繋がるものだろう(“XO”にまつわる一件ではダイナスティ固有のおぞましい驕りも見え隠れしたが……)。前作で成果を上げたシェイ・テイラーやジェフ・バスカーの名はなく、大半の曲でロック・ネイションの新鋭であるブーツ(元ブロンズのジョーディ・アッシャー)がサポート。ジャスティン・ティンバーレイクを含むティンバランド軍団や、馴染みのドリーム、ヒット・ボーイ、ライアン・テダーら膨大なクリエイター陣が各パーツを担当した複雑なクレジットは最近のカニエ作品などにも近いが、細部まで重ねられた推敲の成果を支配力の強い主役のヴォーカルが結わえているのはいつも通りだ。その歌も、ディテイルによる“Drunk In Love”では退廃的なリアーナ唱法(?)を交ぜ込んできたり、ファレルも関与したブギーの“Blow”ではデスチャ風のコーラスを織り重ねたり、ビートの色調に応じて歌唱面でも挑戦や工夫が凝らされているのが楽しい。で、どうも昨今は情報摂取の流れが硬直化しているせいか昔以上にリスナー性向が一転集中絶賛型になりやすいようだが、ビヨンセが最高なのは当然なので、むしろ今作への呼応or反動から生じるであろうシーン総体の動きに期待したい。
bounce (C)出嶌孝次
タワーレコード(vol.363(2014年1月25日発行号)掲載)
ビヨンセが『4』に続くニュー・アルバムの制作に着手したのは、2012年夏ごろのこと。その進捗状況は“Grown Woman”や“Standing On The Sun”といったCMソングなどから垣間見ることができたが、リリース時期が一向に見えてこないなか、2013年7月には50曲ほどあった新作用のマテリアルをすべて白紙に戻して一から作り直すとの報道もあり、作業の難航ぶりが窺えた。同時期にはシングル“Bow Down”の高圧的な歌詞がリアーナやキーシャ・コールから非難されたりと、順風満帆だったビヨンセのソロ・キャリアにもついに試練が訪れたかと思ったが……そんな杞憂は木っ端微塵に吹っ飛ばされた。新曲14曲と17本のビデオで構成された大胆なパッケージング、そして前告知一切ナシのiTunes独占先行リリースなど、ビヨンセの勇気ある挑戦はもちろん賞賛に値するが、肝心の音楽的評価がおざなりになるような事態は本末転倒というもの。今回のビヨンセは音の方もいままでになく〈攻め〉の姿勢をとっていて、“Drunk In Love”や“Flawless”でのトラップ・ビーツ、“Haunted”でのポスト・ダブステップ、“Blow”でのブギー/ディスコ、“Mine”でのアンビエント・ソウルなど、アンダーグラウンドのモードを採り入れたフューチャリスティックなR&Bトラックが次々と繰り出されていく展開は時代のエッジに触れている実感と興奮がある。ディアンジェロ“Untitled”ばりの妖艶なブラックネスを発散する“Rocket”なども含め、〈ヒップなビヨンセ〉を堪能できるという点においては彼女のディスコグラフィー中でも随一と言っていい。
bounce (C)高橋芳朗
タワーレコード(vol.363(2014年1月25日発行号)掲載)