2000年『Fluide』で鮮烈なデビューを飾って以来、2002年マーシャル・ソラール国際ジャズ・コンペティションで優勝した他、名だたるコンペで数々の栄冠に輝くなど、実力と人気を誇ってきたバティスト・トロティニョンの待望の新作が登場です!
2008年以降は、マット・ペンマン、エリック・ハーランドといったNY 拠点の気鋭のリズム・セクションをバックに迎え、ヨーロッパ中心の活動からワールド・ワイドに飛躍。2012年にリリースしたマーク・ターナーとのデュオ作品『Dusk is aQuiet Place』で新たなファンを大きく獲得したと言え、今年はデュオでカナダ・ツアーも敢行、注目を集めてもいます。
今回は久しぶりのトリオ作品!全編トリオでの作品は2001年の『Sightseeing』以来となりますので、実に13年振り。メンバーは、ベースに欧米を股にかけ活躍する朋友トマ・ブラメリー。ドラムにはマーク・ターナーらとのFly を始め、メセニー=メルドウ・カルテット、ジョシュア・レッドマン・エラスティック・バンド等々、錚々たるバンドのドラマーをつとめ、現在フランスを活動の中心に移したジェフ・バラードですから、背景だけでも好奇心をそそりますが、作品の内容も、筋の通った経験を積み重ねたアーティストの充実ぶりを伝えてくれます。
魅力は磨きのかかった演奏力と、多彩で、物語性にも富んだ曲の数々!
しなやかなリズム感覚とテクニックはデビュー当時から語られていることですが、麗しく流れるようなメロディは、まばゆいばかり!メンバーとの相性も抜群。大胆かつ繊細、そしてウィットに富んだキメのオシャレさなど、トリオ・サウンドの妙は、作品の冒頭数曲を聴いただけでも納得いただけること、間違いなしでしょう!
曲は、全曲バティスト自身によるもの。2012年に発表した『Song Song Song』は全編シンガーをフィーチャーしたもので、近年コンポジションにも注目が集まっていましたが、フランス人としてクラシックとジャズを表現の核にしながら、多彩な音楽要素を織り込み、色彩感も豊かに描く作曲の才能もこの作品で大きく開花。作品を包み込むような予兆にも満ちた静謐感が漲るオープニングを始め、ラテン的なリフとしなやかなソロが鮮やかに交錯するナンバーM2、ビートルズ・ナンバーのノスタルジーを曲に織り込んだM3(タイトルは” ポール”)、そうかと思えば、生のドラムンベース的なリズムをバックにしたバット・プラス辺りを彷彿とさせるパーツと、クラシック的なアコースティックのピアノの美しさをフィーチャーしたパーツを組み合わせたM-6のようなナンバーあり、シャンソン的なナンバーあり・・。しかし、曲の数々は自然な流れとなって、一つのストーリーを描いていきます。
発売・販売元 提供資料(2014/07/01)
フランスの俊英ピアニスト=バティスト・トロティニョンの新作…にして、約13年ぶりになる全編トリオ作品! ドラムにジェフ・バラードを迎えたこともあり、遊び心も多分に含む先鋭的/刺激的なアプローチが全編で炸裂。物語性を全面に押し出しつつ、人間的な温もりを失うことのない美しいメロディはここに極まったと言えるでしょう。表情豊かな楽曲群も本作も魅力のひとつで、冒頭(1)の風格と気品溢れる空間から突如チック・コリアばりのスパニッシュに突入していく(2)、そして(どこかビートルズライクな)ポップなテーマから思案的なインプロに繋がる(3)の流れは絶品ですね。名曲だらけなのです!
intoxicate (C)平野望
タワーレコード(vol.111(2014年8月20日発行号)掲載)