イスラエル出身、2003年のデビュー作『Trumpet Player』(fresh Sound New Talent)からその才能を遺憾なく発揮。ニューヨーク・タイムズでも称賛され、2012年にはダウン・ビート誌のクリティックス・ポール(Rising Star 部門) にも選ばれたトランペットの異才“アヴィシャイ・コーエン”の新作が、堂々の登場です。
2010年に『Triveni1』, 同年の録音『Triveni2』を2012年にリリース。人気も右肩上がりで注目を集めてきましたが、本作Dark Nights』では、3人の素の姿が収録された作品となりました。というのも、本レコーディングは・・
☆特別なリハーサルもなく、録音日は1日
☆1曲につき3テイク以上はとらなかった、とのこと。
☆しかも、アヴィシャイのオリジナルは、新曲であったにも関わらず、オメルとナシートへは具体的な指示もなく演奏したとのこと。
☆多重録音をした部分も、プレイバックを聴くことなく、録音したものに即興的に重ねたとのこと。
☆スタジオはもちろん個室も無しの同フロア、ヘッドフォンもなし。
つまりは、それぞれが、個性そのままに演奏したライブ感溢れるサウンド。もちろん信頼感があるからこそ成り立つわけですが、結果、様々な色彩感をもちつつ、自然発生的で、絶妙にオーガニックな作品に仕上がりました。
オープニングから、ミステリアスなオメルのベースに導かれるアヴィシャイのトランペットは、ダークな色彩感な中でも、世界観がたっぷり。アコースティックな演奏にエレクトリックなイフェクトをかけたトランペットの音が重ねられて行きますが、そのスリル感は、映像からインスパイアされて即興で音楽を描いた『死刑台のエレベーター』でのマイルスの即興のよう。
3人がフリー・インプロのようなものを聴かせるM2のようなトラックもあれば、尊敬するオーネット・コールマンに捧げるM6では、ハーモロディックな面白さを、トリオで再現。超スタンダード曲M7“Shiny Stockings”は意外にも思われますが、これは、ビッグ・バンドでしばしばやってきた曲なのだとか。
また今回は、3 曲でゲストを迎えていますが、これも必然の展開だったとのこと。アビシャイの実の姉であるアナットは、旅からもどって、スタジオに直行。その勢いがM-3に結実。M9、10には朋友ジェラルド・クレイトンを迎えていますが、9曲目ではアヴィシャイの息子に書いたという曲をシンセで美しく描き上げ、10曲目は、ヴォーカルの歌判をピアノで。ラストのこの曲はチェット・ベイカーへのオマージュとのことで、その着想にもまた驚きますが、アンニュイなムードは確実にハマっています。
即興の面白さを追究しつつ、完成度や構成力もあるのがこの3枚目となる『Dark Nights』の魅力。どうやら、本作で、このトリオは別のステージに移ったようです。
発売・販売元 提供資料(2014/06/18)
同郷の同名偉人ベース奏者ではなく、トランペット奏者の気鋭の若手、アヴィシャイ・コーヘンが、オメル・アヴィタル(b)とナシート・ウェイツ(ds)を迎え、2010年と2012年に立て続けに2作をリリースしたピアノレス・トリオ、Triveni名義での約4年振りの新録。アナット・コーヘン(cl)、ジェラルド・クレイトン(p)、ケレン・アン(vo)などのゲスト参加に加え、エフェクトをオーバーダブした実験的なトラックも新鮮。イスラエリアン独特の哀愁のメランコリーを漂わせる乾いた音色とジャズの偉人達へのリスペクトに支えられたアヴィシャイのトランペットの幅広い表現力が格別。
intoxicate (C)稲田利之
タワーレコード(vol.111(2014年8月20日発行号)掲載)