エグベルト・ジスモンチの系譜を継ぐ天才女流ピアニスト、デリア・フィシェルの2011年アルバム「SAUDACOES EGBERTO」。恩師ジスモンチ本人もゲストで参加した渾身のカバー作で、既にファンの間では、近年リリースのブラジル・インストゥルメンタル作品中でもスバ抜けたクオリティの傑作として語られているが、2011年リリース当時の自主制作盤は残念ながらCD-Rであった。しかし、2014年、レーベルが変更になり、待望の正規CDプレス盤として登場する!エグベルト・ジスモンチのレーベル"CARMO"からの1ST「ANTONIO」、ジスモンチ、エルメートがゲスト参加し現代音楽的な重厚な響きとMPBを融合させた2ND「PRESENTE」に続く、御大ジスモンチ曲集。ジスモンチ本人もゲストで、10弦ギターの素晴らしい音色を聴かせてくれている。デリアの特徴は繊細さと女性らしい柔らかさが特徴のピアノ、そしてピアノに比べどこか幼さの残るヴォーカリゼーションの共存にある。この絶妙なバランスがJAZZ/CLASSICの高貴さとMPBのキャッチーさを実に絶妙に繋いでいるのだ。前作以上に「POP」面を聴かせてくれるモスカとの"Um outro olhar"、美しすぎるバンドリンとシンプルなパーカッションの序盤からロック・ビートでアグレッシブなピアノ・ソロを披露する"Cor de sol(Loro)"、ヴァイオリンを迎えた室内楽的な"Palhaco"、そして恩師が10弦ギターを弾きまくるサンバ・トラック"Saudacoes"など、いずれも興味深いトラックだ。ジスモンチ曲の素晴らしさを改めて堪能すると同時に、より自由度を増したデリアの音楽家としての多彩な才能、そしてジャンルやセオリーを横断してクリエイトされる自由な息吹までをも感じられる渾身のアルバム。ジスモンチ・ファンのみならず上質のMPB/ブラジル・インストゥルメンタルを愛するファン必携の一枚。
発売・販売元 提供資料(2014/06/11)
エグベルト・ジスモンチの愛弟子と言えるピアニスト、デリア・フィッシャー初の日本盤。1999年ジスモンチのプロデュースによりECMからリリースされたファースト・アルバム『アントニオ』、2枚目となる『プレゼンチ』ではその間に磨きあげられたヴォーカルを披露。両作品を通してつながりの深まったジスモンチに捧げる作品として、今回のカヴァー・アルバムのアイデアを思い付いたそう。かつてエレクトロニカのグループでも活躍していた彼女が「子どもの頃に聴いたジスモンチ」の楽曲たちをリオで活躍する3人の若手ミュージシャンたちと共にアレンジ/演奏する。ジスモンチのデビュー曲《O sonho》ほか代表曲をオーガニックに彩る。
intoxicate (C)脇川飛鳥
タワーレコード(vol.124(2016年10月10日発行号)掲載)