ステファン・ルスコーニ(p)、ファビアン・ギズラー(b、g)、クラウディオ・シュテルビ(ds)の3人で、スイスを拠点に活動するルスコーニは、メンバー全員が1980年前後の生まれで、ロバート・グスパーやホセ・ジェイムズ、ケンドリック・スコット、ノラ・ジョーンズらと同世代にあたり、いわば、ジャズ新世代のゴールデンエイジ。当初は欧州的なピアノ・トリオ・サウンドだったが、徐々にe.s.t. やバッドプラス的なテクノやロックの要素を取り入れたオルタナティブな感性のピアノトリオとして知名度を高めていった。本作は、アメリカのジャズシーンと呼応するかのように、更に大きく、そして自由に飛躍してみせている。もともと、ソニックユースやレディオヘッドからの影響を色濃く見せ、それに加え、フライング・ロータスやジェイムス・ブレイクへの偏愛をも語る彼らは、多彩なエフェクターや、プリペアドピアノなどを駆使した音響的な工作を、ライヴの場にも持ち込み、ジャズ・ミュージシャンらしく即興演奏の中で巧みに作用させてきた。アルバムでは、それを更に増幅させ、ポストロックやエレクトロニカ的なテクスチャーを提示してきた彼らだが、本作では一気にロック方面へと振り切った楽曲が目を引く。ベースのファビアン・ギズラーがギターを手にした多くの楽曲は、ピンクフロイドのようなプログレや、カンなどのクラウトロックを髣髴とさせ、ミニマルに同じフレーズを繰り返すような楽曲でも、そのフレーズをテーマと呼ぶよりは、ロック的なリフといったほうがしっくりくるような局面が多く現れる。しかし、そこには前作以上に音響的配慮がなされている。ロックサウンドの裏では、ジャズ・ミュージシャンらしい活き活きとしたサウンドが躍動し、音の立体感や抜き差しはこれまでの彼らが見せてきたポストロック以降の感覚の延長だろう。そんな楽曲と並び、人力ブレイクビーツのインストや、軽やかなグルーヴと清らかなコーラスを浮遊感のあるシンセで包み込んだエレクトロニカ・ジャズも収録。楽曲のバラエティは格段に広がっている。
発売・販売元 提供資料(2014/07/04)