シュナイダーハンは生粋のウィーンっ子で、1950～60年代に第2次大戦で人材の払底した独墺系奏者の唯一人の世界的名手として活躍した。清新でいて格調高い演奏で知られ、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を得意とし、とくに1962年のヨッフム&ベルリンとの録音は名盤の誉れが高い。2014年、同じ顔ぶれによる1959年のステレオ録音が発見され、世界初CD化された。演奏は62年盤より熱っぽく、ロマンティック。更に、彼自身が書いたカデンツァ(約5分)が62年盤(3分50秒)よりもずっと長く、技巧的であるのも興味深い。62年盤の洗練された演奏とはまた違う、若々しい魅力に溢れた演奏だ。
intoxicate (C)板倉重雄

タワーレコード （2014/06/20）

シュナイダーハン&ヨッフム「幻の」ベートーヴェン旧盤初CD化! 世界初発売のステレオ音源!

シュナイダーハンとヨッフムが1962年に録音したベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、独墺系の名演奏家同士による正統派の名演奏として今日なお聴き継がれていますが、このコンビに1959年録音による旧盤があることをご存知の方は少ないことでしょう。オーケストラも同じベルリン・フィルで、わずか3年後に再録音というのは極めて珍しいケースです。この録音は1959年8月にモノラル盤(LPM18560)としてドイツでのみ発売されたきり、これまで一度も世に出たことがありません。しかも今回、ステレオ音源が発見されました。最初期のステレオ録音のため、音の定位の甘い部分があったり、テープのつなぎ部分で音場感が変わったりと若干の難はありますが、音質そのものは実に鮮明で瑞々しいのが嬉しいところです。シュナイダーハンの演奏も、古典的で格調の高い1962年盤に較べて、より若々しく情熱的で、フルトヴェングラーと共演した1953年ライヴ盤を思わせる場面が少なくありません。カデンツァは1962年盤同様、ベートーヴェンがこの曲をピアノ協奏曲に編曲した際に書いたピアノ用のカデンツァを、シュナイダーハン自身が編曲したものを使用していますが、その編曲が両盤でかなり異なっています。1959年盤は同じフレーズの繰り返しが多く、より技巧的にアレンジされていて、1962年盤の完成形のカデンツァに至る推敲の跡を実感できるのが興味深いところです。
カップリングは1955年録音のバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番。シュナイダーハンが録音した唯一のバッハ無伴奏曲で、LP時代には10インチ盤でアルヒーフから発売され(13029AP)、好事家の間で名盤として知られたものです。かつて海外盤で何度がCD化されましたが、現在全く手に入らなくなっている貴重な音源です。

タワーレコード （2014/05/08）