モーラムとルークトゥンを初めて融合させたタイ音楽史に残る名盤。
イサーン(タイ東北部)のウボンラーチャタニー県に生まれたアンカナーン・クンチャイは、モーラム界に現れた天才少女で、"歌える"モーラム歌手の第一世代にあたる。国を代表するモーラム歌手、チャウィーワン・ダムヌーンに幼少から弟子入りし、10代半ばで名門楽団、ウボン・パタナー・バンドの主役歌手になった。
本アルバムのタイトル曲である「イサーン・ラム・プルーン」(1972年)は彼女が16歳で吹き込んだもので、現在人気絶頂のターイオラタイにまで歌い継がれる不朽の名作である。同曲はウボンの名プロデューサー、スリン・パクシリを代表する仕事でもあるのだが、理由はこの曲がモーラムをはじめとするイサーンの音楽と、バンコク主導のルークトゥンを融合させた新音楽"ルークトゥン・イサーン"の幕を開けた曲だからだ。天才的なレコード・マン、パクシリが"発明"したルークトゥン・イサーンは、モーラム楽団がロックバンド化し、ルークトゥンのノリで演奏し生まれたもので、モーラムの伝統のタブーも破ってしまった実は相当に奇抜な音楽。しかし「イサーン~」が映画『ブアランプー』の主題歌として大ヒットし、この禁断のカッコ良さに皆が感化され、次々とルークトゥン・イサーンが演奏されていくことに。後にこれが伏線となってイサーン音楽が全国を浸食、90年代にはタイでモーラム・ブームが起こり、ルークトゥン歌手もモーラムを歌わないと興行出来ない状態になった歴史的背景もある。
パクシリ制作の本作は、アルバムといえばシングル曲の寄せ集めというタイで、コンセプチュアルな統一感をもっている点が極めて重要。ウボン・パタナー・バンドの過激なまでにジャンル越境した演奏に、少女の可憐な声が乗る不思議な世界……その後登場するルークトゥン・イサーン諸作と隔絶した存在感をもつ問答無用の名盤だ。ボーナスとして数多ある「イサーン~」のカバーから、コンペッチ・ケーナコーンによるヴァージョンを収録。英語・日本語解説&歌詞説明付き(必読!)。
通常ジュエルケース/ライナー封入
解説:クリス・メニスト(Paradise Bangkok)
貴重写真、要約版訳詩掲載
日本語・英語掲載
発売・販売元 提供資料(2016/09/21)
好事家の心をくすぐる個性的なリリースを続けるEMレコードが、パラダイス・バンコク、Soi48との合同チームでタイのレジェンド達の名盤を復刻するシリーズが始動。第一弾はタイ東北部における伝統音楽モーラムとタイ全域に渡り親しまれている大衆歌謡ルークトゥンを初めて融合させた女性歌手アンカナーン・クンチャイ『イサーン・ラム・プルーン』。モーラムの伝統楽団をエレクトリック化し、ルークトゥンのノリで演奏を行うという当時としては非常にセンセーショナルなサウンドをバックに、当時16歳の天才少女の可憐かつ卓越した歌い回しが得も言われぬ魅力を放つ逸品。タイ音楽ファン必携です。
intoxicate (C)山本康貴
タワーレコード(vol.110(2014年6月20日発行号)掲載)