21世紀突入直前にシーンに現れたサックス奏者、JDアレンが再び、ピアニストを迎えたカルテットで動き始める。デビューは1999年、当時、同世代のアーティストがトリスターノ的な演奏で一つの流れをつくっていた頃も、コルトレーン、ロリンズといったアーティストの延長線上でディープに吹いていたのがこのアレン。〈Criss Cross〉諸作品を経て、近年ではピアノレス・トリオでの独自表現を追究してきましたが、前作『Grace』から再びピアニストを招いてのカルテットを始動。前作に参加したエルダーは、ハーモニーを決して縛ることなく、自由な空間を解放し、1960年代的なスピリチュアリティを漂わせる演奏が話題になりましたが、それに代わってオリン・エヴァンスが加わった本作もその延長線上で、さらに一歩進めた作品となり、1960年代のウェイン・ショーターを彷彿とさせるものも。マイルス・グループでの諸演奏と共に、同僚ハービー・ハンコックや、マッコイ・タイナーといったピアニストを迎えたショーターの〈Blue Note〉諸リーダー作におけるミステリアスで宇宙的な世界が現代に蘇るような感覚は、時代をさかのぼりつつも、今の時代に新鮮に響きます。ケニー・ギャレットと同じデトロイト出身。デビュー当時にはケニー・ギャレットのテナー版などという表現もありましたが、もはやそうした形容も不要と感じさせる作品。意表をつくスタンダード演奏や、ラストには王道のスウィンギーなリズムもあり。JDアレンがゆっくりと、しかし、大きく動き出した予感。
発売・販売元 提供資料(2014/05/19)