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クラシック
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Britten: Piano Concerto; Matyas Seiber: To Poetry; Alan Bush: Voices of the Prophets
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フォーマット

CD

構成数

1

国内/輸入

輸入

パッケージ仕様

-

発売日

2014年03月04日

規格品番

SBT1493

レーベル

SKU

749677149321

商品の紹介
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TESTAMENT
booklet note
Japanese

オーストラリア人ピアニスト、ノエル・ミュートン=ウッドが亡くなってから60年の歳月が経とうとしている。彼の才能を知る新しい世代もだんだん少なくなってきている。これは、ミュートン=ウッドが商業レコーディングをほとんど残さなかったことと、そのほとんどが有名曲を一流でないオーケストラや指揮者と小さなレーベルに録音したものだったという理由に他ならない。20世紀前半は、ラジオ放送のほとんどがライヴであり、そのうちの一部分だけが後の放送用に録音されるという時代であった。ミュートン=ウッドは31歳という若さで亡くなっており、それゆえにキャリア自体が大変短い。だからこそ、残された放送録音はどれも非常に重要なのである。

ノエル・ミュートン=ウッドは1922年、オーストラリアのメルボルンに生まれた。最初は母親からピアノの手ほどきを受けたが、すぐにメルボルン大学音楽院のワルデマール・サイデルに師事するようになる。まさに神童と呼ばれるのに相応しく、あっという間に室内楽、管弦楽、器楽、オペラといったあらゆるジャンルの音楽を吸収しつくし、並外れた初見視奏能力により膨大なレパートリーの知識を得た。14歳にして、母親に付き添われてロンドンの王立音楽院の門をたたく。その1年後には、アルトゥール・シュナーベルに学ぶためにイタリアを旅した。1939年、ロンドンに戻るとフランク・ブリッジに師事して作曲の勉強を開始。サー・トーマス・ビーチャムのオーディションに合格し、1940年、クィーンズ・ホールにてベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番でデビューを果たす。第二次大戦の影響で故郷オーストラリアへのツアーが一旦延期されるが、1945年の夏にこれも実現した。1948年、超難曲とされるフェルッチョ・ブゾーニのピアノ協奏曲をビーチャム指揮BBC交響楽団と演奏した。

現代音楽は常にミュートン=ウッドの関心事の中心にあり、多くの現代音楽作曲家の擁護者としても活躍した。1945年3月、ニュージーランドのピアニスト、リチャード・ファレルとともにストラヴィンスキーの2台のピアノのための協奏曲のオーストラリア初演を果たしてもいる。まったくの同時期に、ヒンデミットの《ルードゥス・トナリス》の事実上の英国初演も成している。1回目はモーリー大学、2回目はナショナル・ギャラリーでの演奏だった。ロンドンに拠点を移すと、イギリスの作曲家の作品を取り上げる機会が多くなった。アラン・ロースソーン、コンスタント・ランバート、マイケル・ティペット、アーサー・ブリス、ハンフリー・サール、ウィリアム・ウォルトンそしてベンジャミン・ブリテンなどである。
発売・販売元 提供資料 (2014/02/18)
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ベンジャミン・ブリテンは1938年のプロムスにてピアノ協奏曲の初演を行っているが、1945年には特に第3楽章に多くの加筆訂正を行っている。新しい版の初演は1946年7月2日チェルトナム音楽祭にてミュートン=ウッドによって行われた。バックは作曲家自身の指揮したロンドン・フィルハーモニー管弦楽団だった。タイムズ紙の特派員は以下のように綴っている。「ミュートン=ウッド氏はブリテン作品の持つ手に負えないほどの難所を克服しただけでなく、見事な成功にまで到達させた。大量の音符は打鍵の確かさだけにとどまらず、特に新しい楽章ではそのひとつひとつにまで表現力が求められるが、このピアニストは十分にそれらの要求に応えていた。」ロンドンでの初演は1946年8月2日のプロムスのことである。ここにもミュートン=ウッドは出演し、バックはベイジル・キャメロン指揮のロンドン交響楽団であった。この放送は残念ながら録音されていないが、同じ顔合わせでBBCトランスクリプション・サービス用に録音するために同年12月にウェンブリー市民ホールにて再演された。

ブリテンがミュートン=ウッドを改訂版の初演ピアニストに選んだのは、ひとえに彼の才能を評価していたからである。確かに、ふたりは親密な友人であった。だからこそ1950年代初頭、ブリテンが歌劇《グロリアーナ》の作曲で多忙な際には、パートナーであったピーター・ピアーズの伴奏をミュートン=ウッドが代わって務めている。ピアーズがイギリス作曲家から2つの作品の演奏を依頼されたのもこの時期であった。1953年5月、マティアス・セイバーの歌曲集《詩に寄す》とアラン・ブッシュの《預言者の声》作品41がピアーズとミュートン=ウッドにより初演されている。3つめの作品はブリテンの弟子でもあったアーサー・オールドハムの《愛の掟》である。4ヶ月後、BBCはこのふたりの音楽家に将来の放送音源用にこれらの作品の録音を依頼する。1953年9月25日、ピアーズとミュートン=ウッドはメーダ・ベールにあるBBCのスタジオに午後2時半に到着しリハーサルをこなし、午後4時には録音を開始した。

マティアス・セイバー(1905-1960 訳注:ハンガリー出身。マーチューシュ・シェイベルと表記されることもある。)は、ナチから逃れるため1933年に祖国を離れ、1935年にイギリス国籍を取得した。ロンドンにおいてモーリー大学で教鞭をとり、1940年代にはBBCのために多くの作品を作曲した。多くは演劇の付随音楽として書かれた前衛的作品であった。1949年はゲーテ生誕200周年記念の年であり、BBCはこの偉大な作家の最高傑作《ファウスト》の新訳作成を1941年よりBBCの社員でもあったアイルランドの詩人ルイス・マクニース(1907-1963)に委託する。BBCがこの新訳を6回に分けて放送した際、セイバーは付随音楽の作曲を依頼されている。1952年、歌曲集《詩に寄す》の創作に着手した頃、セイバーはマクニースの新訳から7行を自身の作品への祈祷文とエピローグとして引用している。
発売・販売元 提供資料 (2014/02/18)
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第2の詩はシェイクスピアの最も有名なソネット《君を夏の日に例えようか(Shall I comparethee to a summer's day?)》である。オリジナルのテクストがそのまま使われており、夏の午後の蒸し暑さや柔らかい風が呼び起こされる。もうひとつのエリザベス朝風の詩が続く。作者不詳の詩であるが、ジョン・ダウランド(1563-1626)が当時の形式に置き換えたものである。'Sleep is a reconciling'と歌われる部分のピアノ・パートは全く逆に動くパッセージで、それまでの歌曲を思い出させ歌曲集全体に統一感を与えている。15世紀のウィリアム・ダンバーはスコットランド王ジェームズ4世の宮廷詩人で最もよく知られている作品は' Timor Mortis conturbat me (死の恐怖が私をかき乱す)'であろう。この詩の本当のタイトルは'Lament for the Makaris'といい25 編からなる完全版はスコットランド詩人達を追悼した祈祷文になっている。それぞれの節の4行目は繰り返されるが、これが' Timor Mortis conturbat me'である。中世にはよく使われる一節であった。ここにカトリックの葬儀の際に使われる文言から引用する:

Peccantem me quotidie, et non poenitentem, timor mortisconturbat me. Quia in inferno nulla est redemptio, misereremei, Deus, et salva me.

日々罪を犯しながらも顧みない私は、死の恐怖にかき乱される。なぜならば地獄には贖いがないからだ。私に慈悲を。神よ。私に救済を。

セイバーは過去の作曲家と同様に、音楽的に《怒りの日》を引用し、歌手には'con terrore(恐怖を持って)'と'disperato(絶望的に)'という指示を与えている。エピローグは冒頭の祈りの音楽の再現でハ長調の4和音に回帰していく。この作品は、ロンドンのショット社により1954年に出版された。作品はピアーズに献呈され、1953年5月22日、ロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールにてピアーズとミュートン=ウッドにより初演された。もうひとつの委嘱作品、アラン・ブッシュの《預言者の声》作品41はピアーズとミュートン=ウッド両者に献呈された作品で、ピアノ・パートからは彼を想定して作曲されたことが聴いてとれる。

コリン・メイソンはリサイタルの後にスペクテイター誌に次のような文章を寄稿している。「我々世代の音楽界において、アラン・ブッシュほど不運な人物は恐らくいない。作曲家としては、傑出した才能を持っている。ウォルトン、ラッブラ、ティペット、ロースソーンと言った作曲家と同世代であるが、その中でも引けをとらない。しかしながら彼の作品は、全作品が他の作曲家達のもの同様に完成度が高いとまで言えないにしても、不当なまでに知名度も評価も低い。」
発売・販売元 提供資料 (2014/02/18)
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メイソンの解説では、この評価の低さはブッシュの政治的理想から来ているという。ブッシュが選択するテクストは思想が優先され、音楽的にはベストとは言えないものが多い。確かに、この楽曲で使用されているテクストもすべて潜在的なテーマを含んでいる。ピーター・ブラックマンによる最終曲はブッシュのイデオロギーに共鳴するテクストではあるが、同様の詩でより良いものがなかったとは思えない。メイソンはこう続けている。「唯一ブレークのテクストは最良の選択と言える。ミルトンは適切なパワーと厳格さを持っているし、他の2曲もブッシュ特有の和声的巧妙さとクライマックスにおける想像力を際立たせている。しかしながら第4曲により作品全体の良さが殺されてしまっている。ピーター・ブラックマンの言葉はまさに預言者の声ではあるが、残念ながら詩人の声ではないのである。」

ピアノ・パートは完全にミュートン=ウッドを想定して作曲されているように感じられる。特に、非常に複雑な対位法で構成されている第2曲はどちらかというとヴォーカル部分よりピアノに重要性が置かれている。これらの事実は、ブッシュがミュートン=ウッドのヒンデミット《ルードゥス・トナリス》初演を聴いていたのではないかと想像させずにはおかない。ブレークの詩に向かう非常に短いトッカータ形式の伴奏部分はミュートン=ウッドのリズミカルな技巧を際立たせている。しかしながら、ブッシュがこのピアニストにインスパイアされて創作したのは、なんといってもブラックマンの詩による最終曲であろう。超人的技術力と極めて複雑なリズムのどちらもがピアノ・パートに要求される。ピアノによるコーダは第1曲の最終部のエコーで構成されている。メイソンは評論を以下のように締めくくっている。「どのような作品も必ず欠点を持っており、それらが演奏の善し悪しを決めることはない。ピーター・ピアーズの歌唱はこの上なく見事で、ミュートン=ウッドの明敏で繊細な伴奏者ぶりもまた然りであった。」

この非常に状態のよいBBC録音は1954年1月9日に放送されたが、その時すでにミュートン=ウッドは他界していた。ミュートン=ウッドはパートナーであったウィルヘルム・フェドリックスとの関係に悩み患った胃痛を放置し続け、1953年年末、そのフェドリックスの突然の死のショックによりアスピリンの大量摂取で自殺を図った。友人達に発見され一時は救出されたが、意志は固く、数日後には青酸カリを服用し1953年12月5日遺体で発見された。この時まだ、31歳の若さであった。翌年、ブリテンはカンティクル第3番《なおも雨は降る》をミュートン=ウッドのために作曲し、1955年1月ウィグモアホールの追悼コンサートで披露された。

60年の月日が流れたが、この並外れた才能を持ったピアニスト、ミュートン=ウッドの名前をクラシック界にとどめておくことは重要なことである。英国音楽と英国作曲家に大いに貢献したピアニストだった。その貢献だけでも、彼の名は英国音楽史上に刻まれるべきなのである。

(C) Jonathan Summers, 2013
訳:堺則恒
発売・販売元 提供資料 (2014/02/18)
収録内容

構成数 | 1枚

合計収録時間 | 01:05:00

1-4. ベンジャミン・ブリテン(1913-1976): 協奏曲ニ長調作品13 34.12
ノエル・ミュートン=ウッド(ピアノ)
ベイジル・キャメロン(指揮) ロンドン交響楽団

5-9. マティアス・セイバー(1905-1960):《詩に寄す》13.35
10-13. アラン・ブッシュ(1900-1995):《預言者の声》作品41 16.41
ピーター・ピアーズ(テノール)
ノエル・ミュートン=ウッド(ピアノ)
    • 1.
      [CD]
      • 1.
        Piano Concerto in D, Op. 13: 1. Toccata: Allegro molto e con brio
      • 2.
        Piano Concerto in D, Op. 13: 2. Waltz: Allegretto
      • 3.
        Piano Concerto in D, Op. 13: 3. Impromptu: Andante lento -
      • 4.
        Piano Concerto in D, Op. 13: 4. March: Allegro moderato, sempre alla marcia
      • 5.
        To Poetry: 1. Invocation
      • 6.
        To Poetry: 2. Sonnet
      • 7.
        To Poetry: 3. Tears
      • 8.
        To Poetry: 4. Timor Mortis
      • 9.
        To Poetry: 5. Epilogue
      • 10.
        Voices of the Prophets, Op. 41: 1. From the Sixty-fifth Chapter of the Book of the Prophet Isiah
      • 11.
        Voices of the Prophets, Op. 41: 2. From the Oration Against the Scholastic Philosophy
      • 12.
        Voices of the Prophets, Op. 41: 3. From Selections from Milton
      • 13.
        Voices of the Prophets, Op. 41: 4. From My Song is for All Men
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