ブリアルを輩出し、近年ではハイプ・ウィリアムスやローレル・ヘイローなどインディ・ダンスの注目アクトを次々とリリースするコード9主宰による<Hyperdub>。そのレーベル・コア・メンバーにしてダブステップ・サウンドにいち早く8bitサウンドを取り入れ、ラスティやジョーカー、スターキー、ゾンビーと並んで注目を浴びた女性プロデューサー、アイコニカが近年のオールド・スクールなハウス・サウンドをモダナイズしたスタイルを追求して完成させたセカンド・アルバム。アルバムは、穏やかで陽性のドローン・サウンドが聴こえる「Mise En Place」(M-1)で幕を開け、やがて、アイコニカが初めてヴォーカルをフィーチャーしたアーバンなハウス・トラック「Beach Mode (Keep It Simple)」(M-2)へとなだれ込む。メロディアスでアップリフティングなイタロ・ディスコ「Eternal Mode」(M-5)、アンビエンスを基調とした「Completion V.3」(M-6)、遊び心溢れるジャッキン・ハウス「Manchego」(M-7)、温和で絶妙なバランスのコードとミニマルなフィンガースナップとの融合「Let A Smi!le Be (Y)our Umbrella」(M-8)を潜り抜けると、「Lights Are Forever」(M-9)、盟友オプティマムを迎えた「Mega Church」(M-10)が本作のハイライトを生み出す。ラリー・ハードが作り上げたクラシカルでディープなハウスの桃源郷を、アイコニカは<Planet μ>、<100%Silk>、<Night Slugs>など世界同時多発で起こる新しいハウス・ジェネレーションの感性と共振しながら、最もモダナイズさせた世界へアップデートすることに成功した。
発売・販売元 提供資料(2013/12/16)
2000年代半ばからダブステップ・シーンを牽引してきた、コード9率いるハイパーダブ。看板アーティストのブリアルを中心にムーヴメントの隆盛に一役買い、確固たる地位を築き上げてきたレーベルだが、彼らが凄いのは新たなベース・ミュージックの境地をいまも開拓し続けていることだ。キング・ミダス・サウンドやハイプ・ウィリアムス、ローレル・ヘイローなど、その刺激的な音は枚挙に暇がないが、アイコニカもそこに名を連ねるひとり。奇才が集まるハイパーダブ勢にあってなお、異彩を放つ女性プロデューサーだ。<br />そんな彼女の2作目『Aerotropolis』は80sに焦点を当て、リズムにシカゴ・ハウスの要素を採用。先行シングル"Beach Mode"なんて、80sのR&B風でありながら現行のインディー・ダンスにも通じるハウス・チューンだしね。彼女流のオールド・スクールな雰囲気を出しつつ、ファニーでストレンジかつダンサブルなベース・ミュージックに仕上げた手腕は見事。ベース系の人がハウスに向かっている一つのトピック的な作品といえるかもしれない。
bounce (C)池田謙司
タワーレコード(vol.357(2013年7月25日発行号)掲載)