『ブランク・プロジェクト』は、1996年の3rd『マン』以来となるソロ作品(単独名義での通算第四作)。フォー・テットがプロデュースを担当、ロンドンのインプロ・デュオ<ロケットナンバーナイン>がバックを演奏したアルバムは、ポスト・パンクな自身のルーツをほのかに匂わせながら、ベース・ミュージックやジャズを消化した尖りまくりのオルタナティヴなクロスオーバー・サウンドにのせネナ流オリジナル・アーバンを披露。M-8「Out Of The Black」ではスウェーデンのポップ歌手ロビンをフィーチャリング。熟し深みを増した、しかしながら一聴して彼女のものとわかる特徴的な歌声、フォー・テットによる魔法の手とロケットナンバーナインの切っ先鋭いパフォーマンスの三つ巴による時空を越えた音のミラクル。ベース・ミュージックを中心としたUKクラブ・カルチャーのパイオニアとしての面目躍如、『ロウ・ライク・スシ』(彼女のデビュー・アルバム)に匹敵する圧倒的なパワーとソリッドなパンク精神を感じさせる傑作となりました。
発売・販売元 提供資料(2014/02/05)
ドン・チェリーを継父に持ち、かつてはニュー・エイジ・ステッパーズやリップ・リグ&パニックに参加。最近ではシングとのコラボで音楽通を唸らせたネナ・チェリーが、18年ぶりにソロ作を発表した。プロデュースはフォー・テット(オマール・スレイマンに続きキャラの濃ゆ~い人を手掛けますな)、演奏はロケットナンバーナインが担当しているため、全盛期を知らないヤングも手に取りやすいだろう。往時のファンク・パンクと現行ベース音楽を線で結びながら、絶妙な余白を残したシンプルかつヒネリの効いたサウンドを披露。そのなかで、乾いた質感と艶っぽさの同居する歌声が唯一無二の存在感を放っている。96年作『Man』のラストと同名異曲“Every -thing”で幕を閉じる演出も良い。
bounce (C)佐藤大作
タワーレコード(vol.365(2014年3月25日発行号)掲載)