初期のニーナ・シモンやロバータ・フラックを連想させるパワーや精神性を感じさせ、既に多くの評論家から賞賛を集めているザラ・マクファーレン。2012年にはオランダで開催されたニーナ・シモン・トリビュート・コンサートに、グレゴリー・ポーターと共に出演。またここ日本にもニコラ・コンテ、ティル・ブレナーと共に来日している。日本デビュー作となる本作『イフ・ユー・ニュー・ハー』は、ザラ・マクファーレンがジャイルス・ピーターソン主宰の〈ブラウンズウッド・レコーディングス〉よりリリースする2作目のアルバム。自らの可能性を押し広げ、ソリッドなトラックに乗せ繊細で変化に富んだその歌声を露わにしている。自作曲に加え、意外なカバー曲も幾つか収録されており、その中の一つが、見事なジャズ・アレンジが施されたジュニア・マーヴィンの名曲“ポリス・アンド・シーヴス”だ。ジャマイカ独立50周年を祝うべく、ミュージック・ビデオと共に発表されたこの曲は、すぐさまファンやラジオからの熱い支持を得て、YouTubeでは既に37,000回以上再生されるに至っている。知る人ぞ知るカルト名曲、ノラ・ディーンの“アンジー・ラ・ラ(アイ・アイ・アイ・アイ)”では、ニューヨークで活躍するレロン・トーマスをトランペットとヴォーカルで起用している。 同じく〈ブラウンズウッド・レコーディングス〉からデビューしたホセ・ジェイムズが、いまではグレゴリー・ポーターと共に現在進行形の男性ジャズ・ヴォー カル・シーンを牽引しているように、今後の女性ジャ ズ・ヴォーカル・シーンの未来を担うであろうザラ・ マクファーレン。その魅力が本作によって紐解かれている。
発売・販売元 提供資料(2013/10/29)
ニーナ・シモンからの影響を自認するロンドンのソングストレスがブラウンズウッドより放った2作目。ジャズを軸にゴスペルやソウルの感覚を滲ませ、気心の知れた演奏家と紡いだ静謐な音世界は、今作でもその繊細で魂のこもった漆黒の美声を曇りなく輝かせる。共演経験のあるグレゴリー・ポーターにも通じているが、彼女の人生を豊かにした黒人女性たちを称えていく誇り高き内容に比較など不要だろう。カヴァーも上々で、ノーラ・ディーン“Angie La La(Ay Ay Ay)”では名手レロン・トーマスが歌とトランペットで深みを加え、ジュニア・マーヴィン“Police And Thieves”では社会問題に踏み込みつつ自身のジャマイカン・ルーツを表明。静かだがアグレッシヴな最新型ジャズ・ヴォーカルの秀作だ。
bounce (C)林剛
タワーレコード(vol.362(2013年12月25日発行号)掲載)