実験的作品を意欲的に発信するノルウェーの作曲家ハーゲン
南ドイツの町ドナウエッシンゲンで毎年開催される音楽祭は、「同時代の音楽」のもっとも重要な音楽祭のひとつとして国際的に知られています。初めて行われた1921年にはヒンデミットの弦楽四重奏曲第2番、1925年にはストラヴィンスキーのピアノソナタ、1954年にはブーレーズの《ポリフォニーX》、1960年にはメシアンの《クロノクロミー》と、「新しい音楽」の作曲家たちの作品が初演されてきました。このフェスティヴァルを主催する南西ドイツ放送(SWR)がノルウェーのラーシュ・ペッテル・ハーゲンに新作を委嘱したのは、最初が2005年、2度目が2011年です。ノルウェー作曲家協会のレーベル、Auroraの新しいアルバムには、この2つの委嘱作を含む、ハーゲンの管弦楽のための全作品(2013年5月現在)がオスロ・フィルハーモニックによる新録音で収録されました。彼は、ブックレットに掲載された作曲家のアイヴィン・ビューエネとの対話の中でこう語っています。「今のオーケストラはマーラーとシュトラウスのころから変わっておらず、好むと好まざるとにかかわらず、そのこととうまく折り合わねばならない。オーケストラの編成と響きがマーラーの時代と同じなら、マーラーより優れたオーケストラ曲を書くという不可能を受け入れることが、私にとって前提条件となる。マーラーの後、オーケストラの歴史は廃墟となった」。
キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料(2013/10/01)
ドナウエッシンゲンで2005年に初演された《ノルウェー・アーカイヴ》は、室内オーケストラとエレクトロニクスのための作品です。〈自然として見るノルウェー性〉〈6つの賛美歌〉〈メランコリーの劇〉〈聖トマス調律〉〈葬送行進曲〉の5曲が続けて演奏されます。ライヴ・エレクトロニクスは、SWRのEXPERIMENTALSTUDIO(実験スタジオ)の担当です。つづく3つの作品、《古代遺跡の偉容を前にした芸術家の絶望》《トヴェイト断片》《エドヴァルド・グリーグに基づく葬送行進曲》はそれぞれ、オスロ・フィルハーモニック、ノルウェー室内管弦楽団、ベルゲン・フィルハーモニックがノルウェー文化評議会の支援を得て、ハーゲンに委嘱しました。「聴き手」の受ける印象を第一に考えるからか、ハーゲンは作品について明確に語ることを避けています。《ノルウェー・アーカイヴ》と同様にこの3作も、《トヴェイト断片》が火災に遭ったトヴェイト農場の焼け跡から見つかった手稿譜の「断片」を素材としたことに触れた以外、作品の「ヒント」は示されません。
2011年の音楽祭で演奏された《ツァイトブロムに》は、ノルウェーの民俗楽器、ハリングフェレ(ハルダンゲルフィドル)とオーケストラのための協奏曲として作曲されました。この作品は途中にハーゲンの英語のスピーチとヴィーラント・ホーバンによるドイツ語の通訳が挟まれます。その中でハーゲンは、共鳴弦をもち、独特の「音」を響かせるハリングフェレを使ったことに言及しました。「ハリングフェレはノルウェー民俗音楽の中心にあり、グリーグの《抒情小曲集》の出発点となりました。私がハリングフェレの音楽を使うことを私が選んだのは、グリーグと同じ理由です。音楽的な個性と異国趣味の感じを出すためです。前回参加したフェスティヴァルでこの戦略が成功を収めたようなので、ふたたびその成功に預かれればと思いました」と、聴衆の笑いを誘っています。
オスロ・フィルハーモニックを指揮するロルフ・グプタ(1967-)は、作曲家としても活動しています。ハリングフェレのソロを弾くイェルムン・ラーシェン(1981-)は、2011年10月16日、フランソワ=クザヴィエ・ロトが指揮した初演のソリストです。オーレ・ブル・アカデミーと国立音楽アカデミーに学び、フィドルアンサンブルのマヨルシュトゥーエン(2L11)のメンバーとして活躍。イェルムン・ラーシェン・トリオとして録音したアルバムや子供のためのアルバムがスペルマン賞(ノルウェー・グラミー賞)にノミネートされ、ジャンルを超えた活動で今日のノルウェーの音楽シーンをリードするひとりとみなされています。
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発売・販売元 提供資料(2013/10/01)