渋みと深み。濃蜜な歌。ケラスの最新盤はエルガー!
ノスタルジックなドヴォルザーク
明るく甘い歌い回しのチャイコフスキー!
★ケラス待望の新譜は、エルガーの協奏曲!冒頭のカデンツァから、渋みと深みの極み。えぐるような、しかし決して力技にならない、研ぎ澄まされたバランス感覚の音色で切々と歌う旋律は絶品。第2 楽章では、ビエロフラーヴェク率いるオーケストラが、ケラスの抒情豊かな表情に見事なまでにぴったりと寄り添った表情で応えています。ケラスというと、アルカント・カルテットのバルトークで魅せるような、凄味や、カミソリのような切れ味などが思い浮かぶかもしれませんが、このエルガーは、濃密な歌に満ちていて、ちょっとその表情の豊かさに驚かされるほど。もちろん、いつもの通り、音楽の核心を突く真摯な演奏を展開していることはいうまでもありません。最後の一音まで聴き逃せないような、迫真の演奏の登場です。続いて収録されているドヴォルザークも、ノスタルジックで詩情に満ちたロンドと、夢見るような「森の静けさ」など、柔らかな表情で聴かせます。「ロココ主題の変奏曲」は、非常にノーブルな音色と明るい歌い回しで、甘く品格ある世界を展開しています。緩徐楽章でのメランコリーもぐっときます。クライマックスでの速いパッセージも、実に軽やかに完璧に弾きこなしているのはさすがです。
★エルガーでの渋みと深み、ドヴォルザークでの詩情、チャイコフスキーでの明るさなど、ケラスのもつ底知れぬ表情表現力とテクニックを究極まで味わうことのできるプログラミングといえるでしょう。また、ビエロフラーヴェクは、もともとチェロ弾きだったということもあり、ケラスも完全に信頼しているのがわかります。指揮者、ソリスト、オーケストラ全員が、真摯に作品世界に入り込んでいることがわかる力演です。
★チャイコフスキーで、ケラスはフィッツェンハーゲン版を採用。この理由について、「チャイコフスキーが、自身のオリジナル版の通りにこの作品が演奏されることを意図したとはどうしても考えることができませんでした。もちろんチャイコフスキーは、フィッツェンハーゲンが自作を改訂したことについて非難しましたが、それは、改訂したことにではなく、相談もなしに為されたことに対してだったのではないでしょうか。チャイコフスキーは、この版をレパートリーとして暗黙のうちに認めていましたし、自身のスケッチ的なオリジナル版を完成させて、フィッツェンハーゲンの版を排除しようとしたりしませんでした。また、フィッツェンハーゲンの版は非常に成功していると思うのです。」と語ります。
キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料(2013/07/29)
アルカント四重奏団での活躍も常々話題となっている実力派チェリスト、ケラスによるエルガーのチェロ協奏曲。いつもの切れ味鋭い演奏とは一味違い、全体が優しい歌心に満ちています。繊細で思慮深い、紳士的な演奏は、この作品におけるひとつの理想系といえるでしょう。また見逃してはならないのが併録された『ロココ変奏曲』。ノーブルな音色と細部まで神経の行き届いたニュアンスの豊かさで、品格漂う名演を聴かせてくれます。
intoxicate (C)桐島友
タワーレコード(vol.106(2013年10月10日発行号)掲載)
これぞ正に大人の演奏だ。
聴く程に味わいが滲み出てくる。