ハービー・ハンコックら大物アーティストと共演するなど、イスラエルから世界に羽ばたいた才能エリ・ディジブリ。イスラエル人のアイデンティティと美しくダイナミックなジャズの美学が見事に融合した演奏を見せる6作目のリーダー作品。メンバーは、同世代のBarak Mori(b)がガッチリとバンドを支えるのはもちろんのことながら、ドラムには18歳のOfri Nehemya。そして注目は録音時16歳のピアニスト、ガディ・ラヴァディ(Gadi Lehavi)。チック・コリアが強力にバックアップし、目をかけるのが、この若きラヴァディ。そんなメンツでのカルテットの演奏は「イスラエル出身者としてのアイデンティティと、美しく、かつダイナミックなジャズの美学が見事に融合した演奏」。スタイリッシュなアレンジのオープニングでサラッと耳を引付けたあとは、思い切りルーツに根ざしたイスラエル・メロディ。ユダヤ的な音階によるテーマ・メロディを核としつつ、その節回しが、バッキング、ソロのそこかしこから踊り舞う展開と、コンテンポラリーなジャズが渾然一体となったのが2曲目。そして、続く演奏には、幼少の時よりクラシックを勉強した神童ピアニストとエリのサックスの美しきバラード・デュオが。この繊細なピアノと、懐の深さも湛えたエリの演奏も絶品なら、4ビートを基調に4人が豪快な演奏を見せる次のトラックあり(このモード・ピアノを聴くとチックの目さえも引いた才能を感じます)…。前半部だけをとっても、このグループの表現の広さに感心してやみません。イスラエル人としてのアイデンティティを持ちつつ、ジャズの美学を俄然深めた味わい深い作品。この表現力と存在感、注目です!日本語帯、解説付き。
発売・販売元 提供資料(2013/08/13)
前作ではブラッド・メルドーらベテラン勢を迎え、彼のキャリアの集大成としてその成熟ぶりを見せつけたエリ・ディジブリ。それから3年、本作では敢えて若手注目株を起用。更なるイスラエル人ジャズ・ミュージシャンの躍進およびシーンへの滑らかな融和を予見させる出来ばえで、特にガディ・ラヴァディのフレッシュでダイナミックなプレイは見事。何といっても、エリのルーツに根差しつつも視野の広い音楽性と表情豊かなフレージングに、つい目を閉じて聴き入ってしまう。
intoxicate (C)多胡友絵
タワーレコード(vol.105(2013年8月20日発行号)掲載)