ブルックリンを拠点に活動するグレイ・レヴァレンドことL.D.ブラウン。彼の音楽の最大の魅力は、これまでも比較されてきたエリオット・スミス、ホセ・ゴンザレス、レイ・ラモンターニュ、ウィル・オールダムといったアーティストと同様、情感的にも音楽的にも"飾り立てられることのない実直さ"とこだわり抜かれた"生音"にある。本作は、ザ・シネマティック・オーケストラのジェイソン・スウィンスコー主宰のレーベル〈Motion Audio〉からリリースされる。これまでにもザ・シネマティック・オーケストラ作品や、現在国内外でロングセラーを記録しているボノボの最新アルバム『The North Borders』作品で披露した芳醇な歌声や、師であるジャズ・ギター・レジェンド、パット・マルティーノの指導のもと学んだパーカッシヴに演奏される独特なギター奏法が、アーティストの間でも話題となってきた。今回のソロ作品では、ブルージーなピアノや有機的なエレクトロニックのアクセントが加わったことで、シンプルに構成された楽曲の中でさらに魅力を放っている。爪弾かれるメロディと、切なる思いに溢れたヴォーカルとによって優しくアルバム全体のトーンに導いていくオープニング曲「Everlasting」。エリオット・スミスに対する思い、さらには、果てしない精神的高揚と美しく綴られる失望との紙一重を絶妙に描き出すスミスの才能をも想起させる「Only One」。ホセ・ゴンザレスへのリスペクトを込めて書かれたという唯一のインストゥルメンタル曲「Little Jose」。「The Payoff」では、2012年にこの世を去ったペラルタの美しいピアノの演奏を聴くことができる。そしてアルバム本編のラストを飾る名曲「Fate」が、アルバムの最後を美しく締めくくる。アーティストの心をそのまま映し出したかのようなサウンドと、誠実に歌われたストーリーによって完成した本作『A Hero's Lie』は、時代を越える名盤として語り継がれるだろう。
発売・販売元 提供資料(2013/09/06)
ブルックリンを拠点に活動し、ボノボやシネマティック・オーケストラ作品にも参加経験のある男性シンガー。日本デビュー盤となるこの3作目も前作同様、アルペジオを中心としたパーカッシヴなギター演奏、そして繊細で美しい歌声が魅力の叙情派フォーク作品となっている。時折顔を出すストリングスやキーボード、メロトロンがアルバムに彩りを加え、全体的な印象はニック・ドレイクを彷彿とさせるほど。
bounce (C)赤瀧洋二
タワーレコード(vol.358(2013年8月25日発行号)掲載)