2013年リリースの『Deriva』は前作『Em Pe No Porto』の作風を更に進化させた作品。とりわけ電子音と生楽器によるアンサンブルにおいて実に興味深い変化をみせている。セッションさながらにエネルギー迸る二者が衝突するような#1、かと思えば間逆のベクトルで展開されるコミカルな換骨奪胎的アンサンブルの#2。ロウレイロの『So』にも参加していた本作の共同プロデューサー/電子音楽家=ペドロ・ドゥラエス(Pedro Duraes)の参加がキーとなっているのであろう。唯一のカバーとなったレジアォン・ウルバーナの"Acrilic On Canvas"含め、繊細だった編曲面に荒々しさ激しさが加わり、前衛性がより顕著となったことでフィジカルに訴えかけてくるようなサウンドを作り出している。とはいえ「歌」が中心であるのは前作と変わりない。ルイス・タチチ、マケリー・カーに加え、マウロ・アギアール、ベルナルド・マラニャオンという気鋭の作詞家を加えた歌の世界観は、アヴァンギャルドになったサウンドと不思議に相性がよく、気がつくとクリストフのヴォーカルに意識がフォーカスしていく。弦楽四重奏+ヒカルド・ヘルズ(violin)をソリストに迎えオペラのように展開していく#7、耽美的なサウンドを聴かせる#8・・・。引き続きバックを務めるのはロウレイロやハファエル・マルチニ、アレシャンドリ・アンドレスといったミナスの気鋭の若者達だ。ラストを飾る"Devires"では海の音が微細に漂う中、緻密なオケと数世紀を総括するような格調高い詩世界によって締めくくられる。海と自然科学をテーマとするロシアの写真家Alexander Semenovの写真をモチーフにしたジャケットも実に象徴的だ。人間の想像力を遥かに凌駕する自然の生命力のように、美しく幻想的な世界で我々の意識を拡張してくれたクリストフ。2013年を代表する一枚として人々に記憶されることは間違いない。
発売・販売元 提供資料(2013/06/28)
ミナスの新世代を牽引する恐るべき才能の塊、と呼ぶべきシンガー・ソングライターの衝撃的な新作。電子音と生楽器を自由自在に駆使した、予測不可能で複雑極まるアヴァンギャルドな曲構成&アレンジに圧倒されるが、ソフトなタッチのヴォーカルが真ん中にあって不思議と耳触りはポップ。白昼夢的かつ走馬灯のような幻想サウンドによって、ディープなトリップへとグイッと一気に持っていかれる危険な一枚です。
bounce (C)ダイサク・ジョビン
タワーレコード(vol.360(2013年10月25日発行号)掲載)