フレーミング・リップス、通算13作目のスタジオ・アルバムのタイトルは…『THE TERROR』。今作にはこれまでのフレーミング・リップス作品よりダークな色合いの9曲が収録されている。また歌詞の面でも、より内向きな視点で描かれているという。しかし、実際聴いてみたらそれほどでないかも知れない。その判断は聴く者に委ねられているのである。フロントマンのウェイン・コインはこうコメントしている「何故、この"THE TERROR"みたいに暗くて不穏なアルバムを作ったのかって? 来るべき答えを、私は本当に知りたくもないね。きっとこれが答えの始まりかも知れないね」。『THE TERROR』は、30年近くにも亘って丹念に手入れされてきた、光と影、苦痛と快楽、混乱と秩序が潮の満ち引きのように入り乱れたフレーミング・リップスの音的悦びの庭から生まれた、大胆で表現的な冒険である。しかしフレーミング・リップスを知れば知るほど、彼らの真髄が想定外なものを期待するマニアックな楽しみにあるということが理解できるようになるのだ。プロデュースを手掛けているのは、バンド、そして彼らと長年コラボレートしてきたDave Fridmann。「愛があるのなら、愛を知り、また与えるべきだ」。ウェイン・コインはそう語り、こう続ける。「私たちは間違いなく生きているといえるが、愛が無ければ、それは死んだも同じだ。THE TERROR(その恐怖)では、私たちの知る限り、愛が無くても人生は続いていく…我々も生かされ続ける…尊厳死というものはないのだ」。13作目にして新たなダークサイドを切り開いたフレーミング・リップス。答えの始まりは今明かされたばかり…。
発売・販売元 提供資料(2013/04/08)
ボン・イヴェールやケシャらを迎えたコラボ盤を挿み、3年半ぶりの新作が登場。宇宙にひとり取り残された……みたいな物凄い孤独感と同時に、すべてから解放されたような、妙な静けさと充足感で満たされている。哲学的なSF映画にも通じる後味。クラウス・シュルツェじゃなく、これをフレーミング・リップスが作ったというのだから驚きだ。メロディーも曲展開も徹底してミニマル&ダークで、今回のアルバムは深いぞ~!
bounce (C)斎藤遠太
タワーレコード(vol.354(2013年4月25日発行号)掲載)