LAを拠点に活動するヒップホップ集団、オッド・フューチャーのリーダーで、2011年に世界ソロ・デビューを果たした野蛮で崇高な札つきラッパー/プロデューサー/クリエイター、タイラー・ザ・クリエイターのセカンド・アルバム。 (C)RS
JMD(2013/04/12)
新時代を迎えている昨今のヒップホップ・シーンの中でも、その中心核を担うLA拠点のヒップホップ集団、オッド・フューチャー。その集団を率いるリーダーとして、2011年に世界ソロ・デビューを果たした"最低にして、最高のラッパー"=タイラー・ザ・クリエイターのセカンド・アルバム。
ソニー
発売・販売元 提供資料(2013/02/19)
タイラー・ザ・サウンド・クリエイターとしての進化
THE OTOGIBANASHI'Sのグループ名はOFWGKTAの字面にインスパイアされているという話を聞いて、セールス規模とか数字じゃない部分でやはりオッド・フューチャーは何かと何かの分岐点になる存在だったのだな、と改めて実感させられた。それは同時に〈ヒップホップを聴かない人も聴けるヒップホップ〉なるもののフォーミュラについて考えさせられもするのだけど、それはそれであって音楽とは関係ない。いずれにせよ、そんな〈OFWGKTA以降〉の時代に世に出るものとしては初のアルバムとなる、タイラー・ザ・クリエイターのサード・アルバム。初作『Bastard』から繋がる〈3部作〉のラストを飾るという設定のようだが、そうでなくてもあきらかに地続きの世界だ。Facebookでもそう名乗るウルフ・ヘイリーという別人格を語り部にしたリリック世界はもちろん、基本的にタイラー本人がプロデュースを担うトラック面の雰囲気もこれまでと大きく変わった気はしない。ただ、今回はとりとめのなさが和らぎ、無意識的にかもしれないが楽曲ごとの個性が立ってきたように思える。ゴッツリしたビートにメロディアスな鍵盤を組み合わせる好みの流儀を中心に、フランク・オーシャンの歌うメロウな"Slater"、激しいビートに反比例してファレルの歌ごと閉塞していくような"IFHY"、OFレーベル入りしたハードコア・バンドのトラッシュ・トークを招いての"Trashwang"、奇矯な賑わしさを帯びた"Tamale"--存在感やリリックに着目されることの多い彼だが、音の創造主としての今後にも期待したくなるような出来映えだ。
bounce (C)轟ひろみ
タワーレコード(vol.354(2013年4月25日発行号)掲載)
彼の真価を世に問う、華やかな傑作
〈ビッチ、俺はたった一匹のゴキブリを喰って大金をゲットしたんだぜ〉(先行シングル"Domo23"より)--あの『Goblin』の衝撃を鮮明にフラッシュバックさせるラインと共に、タイラー・ザ・クリエイターが帰ってきた。その〈ゴキブリ喰い〉のプロモ・クリップでお馴染みの出世作"Yonkers"の歌詞中に登場していた自身のオルターエゴ〈ウルフ〉をタイトルに冠した新作は、これまでスキャンダラスなイメージがひとり歩きしていたところもあるこの男の真価を改めて世に問うことになるだろう。アルバムは〈ウルフ〉と〈サム〉というタイラーが内包するふたりの別人格の対話で幕を開け、エミネム"Stan"のタイラー・ヴァージョンとでも言うべき"Colossus"、前作の"She"を彷彿させるヤンデレ系ラヴソング"IFHY"、コロンバイン高校銃乱射事件をモチーフにしたと思われる"Pigs"など、例によってサイコティックな歌世界が延々と繰り広げられていくが、今回はフランク・オーシャンら脇を固めるオッド・フューチャー勢がこの1年で劇的な成長を遂げたこと、そして初めてクルー外のゲスト??エリカ・バドゥ、ファレル・ウィリアムス、ナズ、レティシア・サディエール(ステレオラブ)、ココ・O(クアドロン)??を招いていることもあって、作品全体にぐっと華が出てきた印象。"Treehome95"や"Lone"など、随所に配置されたジャジーなタッチの楽曲の存在もそんな手応えを高めているようだ。『Goblin』を軽々と凌駕する傑作。
bounce (C)高橋芳朗
タワーレコード(vol.354(2013年4月25日発行号)掲載)