カナダ、ケベック出身(アラスカ出身説あり)のアシッド・フォーク・バンド<ムーンストーン>の唯一のアルバム(オリジナル・リリース: 1973年)。発売元はモントリオールのスモール・レーベル<Kot'ai>で、内容は同レーベルからアルバムを出していた男女のヒッピー・フォーク・デュオ<セギン(Seguin)>につうじる部分もあるが、いつの間にか始まり、気がつくと終わっているような、ミステリアスで虚ろな曲の雰囲気はこのグループならではのもの。カナダ独特の冷たい叙情とも呼べるサウンドを聴かせる一方、ティラノザウルス・レックスやインクレディブル・ストリング・バンドなど、英国アシッド・フォークにも通じる雰囲気も捨てがたい。メンバーは、ランディ・プライス(ヴォーカル、6弦&12弦ギター)、マイケル・ヒース(ヴォーカル、6弦ギター、ピアノ)、キャロリン・マクロード(ヴォーカル、6弦ギター、ピアノ)、デヴィッド・バース(ベース)、フランシス・パス(フルート)の6人で、ヴォーカル担当の3人がソングライティングも担当しているところから、グループの中核的存在であったことがうかがえる。呪術的な男女のヴォーカル、眩惑的でドリーミーなバックの演奏から湧き上がってくる淡いサイケ色が、聴く者を妖しく包み込む。冒頭の[1]は女性ヴォーカルを前面に、ジェファーソン・エアプレインをぐっとソフトにしたようなサイケ・フォークで、本盤のベスト・トラック。フルートをフィーチャーしたケルティック・トラッド風の[7]。ヒース作でピアノを伴奏にしたグルーミーで深遠な雰囲気が美しい[10]、つづくプライス作の[11]など、曲によってリード・ヴォーカルを分担しながら曲調の違いをさりげなく演出しているところにも注目したい。なお今回のメディア・アート(ヴィヴィド)盤は、以前の英RADIOACTIVEからの再発盤のディスクをライセンスを得て使用している。
発売・販売元 提供資料(2013/02/20)