2012年に70歳の節目を迎えた、現ブラジル音楽界を代表する巨人、カエターノ・ヴェローゾの4年振りの新作スタジオ・アルバム。『Ce』(2006年)、『ZII E ZIE』(2009年)に続く、ペドロ・サー(g)、ヒカルド・ヂアス・ゴメス(b)、マルセロ・カラード(perc)によるユニット、バンダ・セー(BANDA CE)との共演による3部作の最終作品にして集大成。タイトルの"アブラサッソ(ABRACACO)"は"深い抱擁"を意味するカエターノによる造語。奇抜なジャケット・デザインもそのタイトルからインスパイアされている。本作で聴かせる、気心知れたメンバーと心行くまで練り込んだ音像は、まさにヴェローゾでなければ生み出せない孤高の美しさを湛える。70歳を迎えた今もなおそのクリエイティヴィティは衰えることを知らず、未来へのさらなる光を放つ作品。プロデュースはカエターノ・ヴェローゾの長男、モレーノ・ヴェローゾ。全曲書下ろしの新曲で、#1~9がヴェローゾ作、#10がMauro Limaとの共作、#11がRogerio Duarte作である。タイトル曲「Um Abracaco」をぜひチェックしてほしい。
発売・販売元 提供資料(2012/12/17)
共同プロデューサーに実息のモレーノとバンドのギタリストであるペドロ・サーという息子世代の2人を迎えて制作された、ブラジル音楽界の巨人による新作。前2作に引き続いて4ピースのロック・バンド編成による、シンプルながらも先鋭的かつちょい変態的な音作りの内容だ。曲ごとに違った表情を見せる、無駄を削ぎ落としてアイデア豊かな美しき骨格だけで構築された独自のスカスカなサウンドは、さらに研ぎ澄まされていてとっても刺激的。一貫して〈過激すぎず、脱力しすぎない〉という、ここ最近のブラジル新世代勢の作品にも共通するような、絶妙なバランス感覚を持った今作は、現在という激動で捉え難い時代の気分/雰囲気を上手く表現している感じがして、凄くリアルに響いてくる。
bounce (C)ダイサク・ジョビン
タワーレコード(vol.352(2013年2月25日発行号)掲載)