『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』(2012年 イギリス作品 / 監督・脚本:ピーター・ストリクランド / 音楽 ブロードキャスト / 出演 トビー・ジョーンズ、コジモ・ファスコ)のサウンドトラック盤。
タワーレコード(2013/10/28)
ピーター・ストリックランドが監督を務めた映画、「Berberian Sound Studio」はその年に最も評価を受けたインディペンデント映画の一つである。デヴィッド・リンチからフランシス・フォード・コッポラまで引き合いに出され、イギリスの情報誌であるTime Outをして「野心的であり、道徳に対して挑戦的で、入り組んだテーマの作品だ。最高の評価に値する」とまで言わしめた作品である。そしてこの映画の魅力を最高に引き立てる役割を果たしたのが、ブロードキャストの手によるサウンドトラックである。このサウンドトラックはトリッシュ・キーナンの早すぎる、余りにも早すぎる死の前に作られたものである。当初は劇中に登場する映画「The Equestrian Vortex」の為に作られたサウンドトラックであるが、結果的にストリックランドが生み出すエキセントリックで魅力的なキャラクター達の持つ世界観を表すものとして、映画全体に使われていった。その音楽は不吉で、辺りを包み込むようであり、正にブロードキャストにしか出せない音の宇宙である。映画では一人のイギリス人の音響技術者が登場し、イタリアの映画スタジオで働くにつれて徐々にその精神状態を悪化させていく模様が綴られていく。そんなイタリアを舞台とする場面においてはエンニオ・モリコーネやブルーノ・ニコライを思わせるサウンドが展開される。ブロードキャスト唯一人のメンバーとなったジェームス・カーギルはサウンド・エフェクトを作り上げ、叫び声やダイアログといった映画の一部を本作にはめ込んでいる。結果として本作は唯のサウンドトラックに留まらず、独立した作品として素晴らしい出来に仕上がった比類なき作品である。
発売・販売元 提供資料(2012/12/27)
42歳で夭逝したトリッシュ・キーナン。このピーター・ストリックランド監督映画のサントラ盤が、惜しくも彼女の遺作となってしまった。果てしなく甘美で気怠いヴォーカル、レトロ・ポップと表現されることの多いメロディー、サイケデリックなエフェクト処理??本作には95年の結成以来貫かれてきた〈らしさ〉が詰まっているのだが、一方でブロードキャストがドリーム・ポップの走りだったようにも思えてきて……。
bounce (C)武田晃
タワーレコード(vol.352(2013年2月25日発行号)掲載)