ブラジルのフィルターを通過したポストロック以降のサウンド、そんな風に聞こえる音楽ではある。ただしエクスペリメンタルを志向しているというより、もっと先天的で、肩の力が抜けた、楽観的なフューチャー感。これこそがドメニコの、そして彼とカシン、モレーノの三人がここ10 年ほど断続的に活動してきたユニット〈+2〉の個性という気がする。加えてドメニコの場合には、サンバの唄心、フックがどうしようもなく頻出しながら、それでいて歌とサウンドとの乖離が全くない。純然たるソロ名義としては初となる本作の魅力も、そんなところにある。リズムをことさら強調する作品というわけでもないけれど、打楽器奏者としてのキレの良さ、サウンドに立体感を与えるプレイも存分に聴けて、身体能力の高さを証明。先述のカシンとモレーノ、ペドロ・サーはもちろんのこと、マニー・マーク、オン・フィルモア(ダーリン・グレイ&グレン・コッチェ)、アドリアーナ・カルカニョットの参加や共作も。
intoxicate (C)成田佳洋
タワーレコード(vol.93(2011年8月20日発行号)掲載)
カシン、モレーノとの<+2>プロジェクトなどで活躍してきたドラマーのドメニコ・ランセロッチによる初の単独名義アルバムは、ラウンジーで洒脱なサウンドのなかに実験精神やリズム遊びがテンコ盛りの未来派音響ポップ大傑作。尖っているくせに飄然とリラックスした、この曲者めいたカッコ良さは、さながら<シー・アンド・ケイクのその先へ……inブラジル>ってな趣。こりゃ、やられた!
bounce (C)田中幹也
タワーレコード(vol.334(2011年7月25日発行号)掲載)