ここ2~3年フィジカル・リリース量の減っているジャマイカン・レゲエ・シーンですが、独立50周年の今年は人気アクトが続々とアルバムを発表する模様。そんななか到着した大注目盤がこちら、3年ぶりとなるショーン・ポールの新作『Tomahawk Technique』であります。アレクシス・ジョーダンを迎えたトランシーな先行カット“Got 2 Luv U"をはじめ、アーバン・ポップ寄りの内容に衝撃を受ける人も多いことでしょう。〈こんなのレゲエじゃない!〉なんて目くじら立てているファンもいるとか、いないとか。が、出世作『Dutty Rock』(2002年)の頃からこの人はずっと尖りまくっていたわけで、今作にもみずから手掛けたリディム〈Material〉(モチーフはマドンナ“Material Girl"!)使いの“Roll Wid Di Don"が、ベニー・ブランコやスターゲイト製のトラックと違和感なく並んでいますし、よくよく考えると作風が変化したこと自体に驚くのはナンセンス。思えばダンスホールは、その時々の欧米のトレンドを激しくクラッシュさせて歴史を塗り替えてきました。そういう視点から見れば、こういったアプローチはとっても王道を行っていると思いませんか? 狭い音域を活かしたあの独特のフロウさえあればOK。どんなオケだろうが、ショーン・スタイルのレゲエになるんです。久しぶりにダンスホールがめちゃくちゃ自由で最高におもしろい音楽であることを思い出させてくれた一枚。これを否定する人は、完全に時代から取り残されていますよ。
bounce (C)山西絵美
タワーレコード(vol.341(2012年2月25日発行号)掲載)
スターゲイトといえばビーニ・マン『Tropical Storm』(2002年)で“Street Life"を手掛けていましたが、同じアルバムには“Bossman"でショーンが参加していたというニアミスもありました。ってことで強引に『Tomahawk Technique』の話に引っ張ってくると……キャッチーで楽しいファースト・シングル“Got 2 Luv U"を聴けばスターゲイトもキッチリとダンスホール・レゲエのつもりで作っているように思えるのですが、どうなんでしょうか。いずれにせよ、制作の軸にスターゲイトとリコ・ラヴを据えた今作は、時代の王道をノシノシ進む盤石の出来映えに違いありません。印象面での変化があるとしたら、過去作の〈ジャマイカ流のヒップホップ〉と解釈できた雰囲気が〈ジャマイカ流のアーバン・ポップ〉になった感触ぐらい。何となくエイコンやアイヤズみたいに爽やかアーシーな雰囲気になりそうな予感もあったけど、主役のアクの強さや声の密度を前提としたビートばかりが用意されているので、その快い引っ掛かりをのどごしに感じながらスルスル呑み込んでしまった感じです。そもそも『Dutty Rock』があそこまでクロスオーヴァーした理由は、何かの戒律に世界が共鳴したからじゃなく、単純にカッコ良かったからだと思うのですが、枠を取っ払ったところで今作がどう聴こえるかというと、やはりめちゃくちゃカッコイイからこれは好きです。
bounce (C)轟ひろみ
タワーレコード(vol.341(2012年2月25日発行号)掲載)
彼が一番輝くのはやはり女性アーティストとの共演だと改めて感じる。
①⑧に比べると他はいつも通りの無難なトースティング。
特段Sexyな声ということもないので、共演というスパイスにより節回しが際立ち、楽曲に魅力を生んでいるのだろう。