OGRE YOU ASSHOLEの通算5枚目となるアルバム。今作はミドルテンポやスローな楽曲が多いが、前作『homely』の印象とはまた違う、優しく、楽しく、そして怪しい、オウガならではの浮遊感あふれる作品。絵画的、都会的であるサウンドに一見投げやりな歌い方にも感じる井戸学の叙情的な美しいメロディラインが、すっと心の隙間に入り込み全身の力が抜けていく一枚。 (C)RS
JMD(2012/09/13)
5thアルバム「100年後」 、1曲目のギターの音色がすべてを物語っている。力の抜けた、ゆるく、メローでチルな感性が広がる。「諦めて/おいで/これまでは/置いて/広い所へ/飛び越えた/あとはもう/見た事がない場所が/前に見える」この歌詞が暗示するように、『100年後』は、山を登っていたらいつの間にか、だだっ広い草原、まだ足を踏み入れたことのない広い場所に自分がいる、そこには心地よい風が吹いている……たとえばそんな空想をうながす。『100年後』とは、『homely』で見せた高いテンションの後のドリーミーなリラクゼーションである。オウガ・ユー・アスホールの3人は、前作の続編を作るような手抜きをしなかった。彼らは、ある意味ではよりポップな展開を探求していると言えるだろう。サイケデリックだが、AOR的でもあり、何気に聴くと歌謡曲みたいだが、実はエクスペリメンタルである。相変わらず音を聴くことの楽しみがある。遊び心旺盛で、さまざまなトリックや仕掛けがある。音でトリップしたい人はヘッドフォンで聴くと良いでしょう。今日生きている人間のほとんどが居なくなっているであろう『100年後』という未来を示すアルバム・タイトルも興味深い。そして、アルバムの最後に繰り返される「なにもない」という言葉が、これほど切なく前向きに響いている。
VAP
発売・販売元 提供資料(2012/08/01)
パーカッションを交えたミニマル・ファンク“素敵なこと”や歌に深いリヴァーブを施した“黒い窓”が醸す緊張感はハンパないが、全体としては弛緩したギターとヴォーカルを中心に、絞った音数で音響もリズム・パターンも練り込んだ良質のポップソング集。ただし、淡々としたメロウネスのなかからモヤモヤと浮かび上がるのは、諦念の先にある穏やかさのような、どこかオプティミスティックな終末感だ。ラストの“泡になって”で繰り返される〈あー ここには なにもない〉〈なにもないからどうにでもなれる〉という言葉と、たまらなくムーディーで、どこか開放的ですらあるサウンド。その間に生じる奇妙なねじれにジワジワと巻き込まれる。ゆらゆら帝国の〈空洞〉に連なる前作のサイケ感をさらに更新した快作。
bounce (C)土田真弓
タワーレコード(vol.348(2012年9月25日発行号)掲載)