21世紀、今という時代を奏でる、現代屈指のピアニスト、フレッド・ハーシュ。2012年2月、ヴィレッジ・ヴァンガードでのトリオ・ライヴ盤。2008年には2ヶ月にわたる昏睡状態に陥り、生死の境を行き来したフレッド・ハーシュ。命さえ危うかった状況にあって、誰がこの復帰を予想出来たことでしょうか?しかし、奇跡的に目覚めたフレッド・ハーシュの復活劇は、『Whirl』そして『Alone at the Vanguard』で見事に証明され、音楽の素晴らしさと、人としての驚異的な可能性を教えてくれました。今回はトリオによる演奏で、メンバーは『Whirl』から不動のジョン・エイベアとエリック・マクファーソンという信頼する2人。『Whirl』の時はまだまだ指先の不自由さを感じさせていたハーシュも、ピアニストとして驚異的な域に達するまでに、素晴らしい演奏をしています。4曲のアメリカン・ソングブック、7曲のスタンダードに加え、7曲のオリジナル。ハーシュがジャズという枠内だけでなく、クラシックも含めて西洋音楽全般に関して研究をしていることは広く知られることですが、表現されるのは、決して借り物ではなく、全てフレッド・ハーシュでなければありえない独自の音楽表現。そこには、研究をもとにしつつ、自らの表現として一音の必然性を追求し、自らのものにしたからこその、自然なメロディの美しさが。「自分にとってベストのレコードかもしれない」、56歳のハーシュが今を語る素晴らしい作品!
発売・販売元 提供資料(2012/08/01)
聴くたびに「知性的なピアノ」だなあ、と思う。フレッド・ハーシュ・トリオによる2012 年2月のN Yヴィレッジヴァンガードでのライヴ2 枚組。オリジナル曲を中心に、スタンダード・ナンバーも取り上げ、独自の世界を聴かせる。快速なテンポのナンバーもあるが全体的な印象はとても静的でピアノのタッチは極めてソフトでしなやか。美術館で油彩の絵画をみているかのような、そんな気さえしてしまうアーティスティックな演奏。
intoxicate (C)馬場雅之
タワーレコード(vol.99(2012年8月20日発行号)掲載)