バルトの海に目覚めた、原石の輝き!トヌー・ナイソーに見出されたヴォーカルの新星。エストニアの歌姫のハートフルな歌声を、今、あなたに。シンガーの写真を見てぶったまげた。いや、ジャケ写の候補も含めた宣材写真なのだが、モデルも顔負けの…格好なのだ(いや、失礼、ルックスそのものも、見ての通り素敵な人なのです)。おそらく彼女は、はじめて自らが関わる日本のリスナーたちに、精一杯ドレスアップした姿を見せようとしたのだろう、と思う。その気持ち、嬉しいものがあるではないか。名を、ラウラ・プルドヴェレという。サワノの重要アーティスト、トヌー・ナイソーが故国エストニアで見出した、文字通りダイヤモンドの原石とも言うべきヴォーカリストだ。豊かな声量で、中音域を充実させたスタイルは、「カワイ子ちゃん」ばかりが幅を利かせる昨今の女性ヴォーカル界にあっては異色と言えるかも知れないが、スキャットの奔放さも聴き物で、並々ならぬ実力を感じさせてくれる。言葉の響き方そのものが醸し出すエキゾチシズムも、大きな魅力と言って良いだろう。そして、何より、バックをトヌー・ナイソー自らがトリオを率いて務めていることが素晴らしい。歌伴奏者としてのトヌーを、我々はここではじめて体験するわけだが、流石というべき鮮やかさだ。今回のレパートリーはビートルズ、ハンコックにバカラックとサービスてんこ盛りなのだが、M4のジョニ・ミッチェルなどは、トヌーでなければ出てこない、といった心憎いチョイス。そして何よりタイトル曲が良い。キースが『ケルン・コンサート』に記録した、とてつもなく美しいソロ・パフォーマンスが、ここに新たな生命を得て蘇る。トヌーのキースに対する変わらぬ傾倒ぶりに、マニアはニヤリとすること請け合いだ。今や、巨匠に近づきつつあるトヌーの手の中の小鳥は、バルト海の歌姫。長く見守って行きたい、と思う。(Text by 北見 柊:ライナーノーツより)
澤野工房
発売・販売元 提供資料(2012/07/25)