1stシングル"Narst"は英高級紙ガーディアンのシングル・オブ・ザ・ウィークに選ばれ、彼女は一躍メジャーシーンにもその名を知らしめる。その後、ケシャの大ヒットシングル『ティック・トック』のリミキサーに抜擢されるなど活躍の幅を広げていったクーリーG。コード9率いる<Hyperdub>からリリースされる彼女のデビューアルバムはUKで新たに台頭した、ハウス・シーン及びファンキー・シーンの真髄とも言えるプロダクションを披露した作品となっている。感情を押し殺した様な唄声とドラマチックな展開の幕開けから、ダンスフロアをじょじょに暖めて行くかのような少し夢見心地なM2、ロマンティックなピアノに率いられ、そこに滑らかなアルペジオが寄り添い、TR-808の瞬くようなドラムが曲を走らせていくM3からセクシーなハウストラックM4までの流れは本当に素晴らしい。空間を意識したプロダクションから後半鳴り響くベース・リフが印象的なM8。そして本作における最も大きなサプライズはあのコールドプレイのカバーであるM9だ。跳ねるようなリズムと、ストリングスで見事なまでに生れ変わったトラックは斬新かつ新鮮に響く。そしてボルチモア・ハウスの伝説Karizmaが参加したM11はトライバルで躍動感あふれるトラックとなっている。そして明滅するリズムと酩酊感のあるボーカルの M13でカラフルなエンディングを迎える。ローレル・ヘイロー、ディーン・ブラント&インガ・コープランド、そしてDVAらに続きよりデビュー・アルバムをリリースすクーリーG。本作は旺盛な実験精神と多彩なポップさを持つ、他では到底見られ無いまさに唯一無二なレコードである。
DIS
発売・販売元 提供資料(2012/06/28)
レーベル・ショウケースを謳っての日本上陸公演も盛況に終わった重低音集団ハイパーダブからの新作は、主宰者コード9と共にUKファンキーを先導してきた南ロンドンの女性プロデューサー、クーリーGことメリッサ・キャンベルによる待望のアルバム! ハウスやブロークン・ビーツを横断するパーカッシヴな変則リズムに甘いシンセやピアノ・コードを走らせ、そこに浮遊感たっぷりにダブ加工された自身のヴォーカルを重ねていく彼女の作風は、このレーベルらしいドープネスを持ちながらチルアウト風情やヒプノ感も混在するユニークな質感。カリズマにシンバッドといったブロークン・ハウス筋の客演も実にハマっている。コールド・プレイ"Trouble"をコンテンポラリーR&B解釈でカヴァーしているのも素直に拍手!
bounce (C)佐藤大作
タワーレコード(vol.346(2012年7月25日発行号)掲載)