ザルツブルク音楽祭2011オープニング・コンサート
ブーレーズ&ウィーン・フィルによるマーラーの「嘆きの歌」
ザルツブルク音楽祭2011のオープニング・コンサートの映像がCmajorよりリリース。2008年以来3年ぶりに巨匠ブーレーズが指揮を務めた2日間(当収録は初日7月28日)は、2011年がマーラー・アニヴァーサリーということで、カンタータ「嘆きの歌」をメイン・プログラムに、やはりブーレーズが指揮活動の重要な柱としてきたベルクの「ルル組曲」と「演奏会用アリア『ワイン』」とが取り上げられました。
【嘆きの歌】
独唱者、混声合唱と管弦楽のための「嘆きの歌」は、ウィーン楽友協会音楽院を卒業したマーラーが、その卒業生を対象にした作曲コンクール「ベートーヴェン賞」に応募するために作曲したカンタータ。マーラーのデビュー作にも位置付けられるこの作品が「落選」後に辿った改訂の経緯はいくぶん錯綜しています。
すなわち、1878年から1880年にかけて書かれた初稿では、「森のメルヘン」「吟遊詩人」「婚礼の出来事」の3部構成でしたが、1888年頃から断続的に改訂が行われ、最終的に1898/99年の改訂稿では第1部「森のメルヘン」をカットした2部構成という形で落ち着いています。
ブーレーズがウィーン・フィルを指揮したこのライヴは、その改訂稿による演奏で、ブーレーズは同じく「嘆きの歌」改訂稿を1969年にウォルサムストウ・タウン・ホールでロンドン響とセッション録音しているので、42年ぶりの再録音ということになります。ちなみにブーレーズは第1部「森のメルヘン」を1970年にロンドン響とウォトフォード・タウン・ホールでセッション録音しており、これが「森のメルヘン」の世界初録音でもありました。
ブーレーズはすでにマーラーの交響曲全曲録音を完了していますが、このうちウィーン・フィルとは1994年に第6番、1996年に第5番、1999年に「大地の歌」、2001年に第3番、2005年に第2番という具合に、シリーズ最多の5曲を録音して相性の良いところをみせていたので、ここでもウィーン・フィルとの顔合わせということで期待も高まるところです。
キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料(2012/05/21)
【「ルル」組曲】
「ルル」組曲は、未完に終わったオペラの第2幕と第3幕からベルクがエッセンスを抽出して仕上げた全5曲からなる作品で、聴きどころである第2幕の
アリア「ルルの歌」はコロラトゥーラ・ソプラノを念頭において書かれています。
ブーレーズは1979年にパリ・オペラ座で、フリードリヒ・チェルハによる「ルル」の補筆完成版の初演を手がけ、世界初録音もおこなっているだけに、作品の理解にはかなりのものがあります。
ブーレーズは、「ルル」組曲を1976年にジュディス・ブレゲンをソリストにニューヨーク・フィルとセッション録音しており、また、ムジーク・トリエンナーレ・ケルン2000においてクリスティーネ・シェーファー&シカゴ響と第2曲から第5曲までの4曲をライヴ収録した映像作品も発表していますが、やはりここではウィーン・フィルとの共演というのも魅力なうえに、1983年バイエルン州のノイ=ウルム生まれ、近年売り出し中のアンナ・プロハスカが独唱に起用されているのが大注目です。
【演奏会用アリア「ワイン」】
ベルクが「ルル」を構想中の1929年に、その作曲を中断して書き上げたのがこの演奏会用アリア「ワイン」です。ボードレールの「悪の華」所収の、5篇の詩からなる「ワイン」より3篇の詩を自ら選び、一部順序を入れ替えて「ワインの精」、「愛し合う人の酒」、「孤独な人の酒」の3部構成の作品としています。十二音技法に拠りながら調性的要素の導入が認められるところが「ルル」や「ヴァイオリン協奏曲」にも通じる特徴として挙げられます。
ここでブーレーズが「嘆きの歌」に続く形でソプラノに起用したのは、ヘンデル、モーツァルトにマーラーと、バロック、古典派から近代までのオペラ、歌曲で高い人気と実力を誇るドロテア・レッシュマン。
ブーレーズは、この曲を1977年にジェシー・ノーマンのソプラノでニューヨーク・フィルとセッション録音しているので、このたびは34年ぶり2種目の録音ということになります。
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発売・販売元 提供資料(2012/05/21)