あのチェット・ベイカーがゲスト参加して、2曲でソロを披露しているのも話題。大きな話題となったDon Betoの『Nossa Imaginacao』などと並んで、ブラジリアンAORの傑作として知る人ぞ知るアルバムがこのジム・ポルトの『リオ』(84年)です。彼は80年代頃からイタリアやフランスなどのヨーロッパ各地で活躍するボーカリスト兼ピアニスト。本作品も84年にイタリアでリリースされたいわゆるヨーロピアン・ブラジリアン物なのですが、80年代前半のアメリカ西海岸サウンドの影響をもろに受けたようなAOR風アレンジが際立つ名作です。やはりブラジル音楽ファンと言うよりも、AORファンの間で高い評価を受けて注目され始めたアルバムで、一曲目の「Smettila」は象徴的なナンバーです。ベースはあくまでモダンなブラジリアン・ミュージックなのですが、都会的なアレンジの打ち込みサウンドが絶妙です。同傾向のナンバーとしては6曲目の「Che Sera」、8曲目の「Sei Musica」、そして9曲目ラストのミッド・テンポのAOR「Arborway」などがあります。特にラスト・ナンバーは素晴らしくクールなアレンジに、なんとゲストのチェット・ベイカーがトランペット・ソロを披露してくれる名曲中の名曲です。チェットのソロとジムのボーカルの掛け合いのパートなどはゾクゾクするよな緊張感に溢れています。チェット・ベイカーは、この他にも2曲目の「Somos Todos Colossais」でもゲスト参加しています。ゲスト陣といえば、チェット以外も非常に豪華。ジャズ界からはトップ・クラスのドラマーRoberto Gatto、ギターリストのMichele Ascolese 等も参加。ヨーロピアン・ブラジリアン系の有名どころも揃い踏みといった様相で、イタリアのパーカッショニストMandrake、リオ出身のギターリストIrio De Paula、その他当時の一流アーティストが集結しています。なお、本作品はイタリア語とポルトガル語の2ヶ国語で歌われていて、これもかなり珍しいかもしれません。
発売・販売元 提供資料(2012/06/04)