独自の音楽性で注目のシンガー・ソングライター寺尾紗穂の2年振り(2012年時)のアルバム。今作は、従来の弾き語り中心のスタイルから一新。さまざまなジャンルのアーティスト・トラックメイカーと1曲毎にコラボレーションした全く新しい形のオリジナル作品。 (C)RS
JMD(2012/04/23)
2007年ピアノ弾き語りによるメジャーデビューアルバム「御身」が各方面で話題になり、坂本龍一や大貫妙子らからも賛辞が寄せられる。今回は、従来の弾き語り中心のスタイルから一新した寺尾紗穂の作品が完成。今作は、さまざまなジャンルのアーティスト・トラックメイカーと1曲毎にコラボレーションした全く新しい形のオリジナル作品に仕上がる。今までのアルバムにはなかった、どこに辿り着くかわからないわくわく感に満ちている。七尾旅人との「時よ止まれ」、Crystalとの「老いぼれロバの歌」、出光TVCMソング以来の共演となるキセルとの「バスの中で」、寺尾紗穂のボーカルとレイヤーされたダースレイダーのラップが強烈な印象を残す「私は知らない」、歌のストーリーとシンクしたSEをふんだんに配置した意欲溢れる鴨田潤(イルリメ)による「はねたハネタ」、特定のジャンル枠に収まらない壮大な世界観が構築されたKazumasa Hashimotoの手による「富士山」。多種多様なアイデアに溢れた全10曲。
ユニバーサル
発売・販売元 提供資料(2012/04/11)
2年ぶりの新作は、やはり多くの聴き手を驚かせるのだろう。計8組ものゲストが参加し、彼女のピアノと歌を電子音で色付けするという、いままでにない音作りがなされているのだ。例えばキセルが携わった“バスの中で”では軽快な弾き語りに愛嬌のあるリズムボックスが重ね合わされていたり、イルリメがアレンジした“はねたハネタ”に至ってはSEを駆使して臨場感溢れる音のドラマが構築されていたりする。その極北はダースレイダーのラップをフィーチャーした福島の労働者の歌“私は知らない”だが、どのコラボも彼女の気高い歌声をクッキリと浮かび上がらせているのが興味深い。戸惑うこともまたこの独創的な作品の楽しみ方のひとつ。何だかんだ言って、かなりの名曲揃いです。
bounce (C)桑原シロー
タワーレコード(vol.345(2012年6月25日発行号)掲載)