90 年代後半～00 年代前半のエレクトロニカ愛聴者にとって、これほど心躍るコラボレーションがあっただろうか。実に6 年ぶりの音楽作品となる竹村延和とツジコノリコが贈るファンタジーという名の電子音楽。ポップで愛らしい音色と先鋭的なトラック、懐かしさも内包したメロディーとツジコ初のラップも。08 年の共演を機に始まった2 人の集成にして、互いのセンスが存分に発揮された超傑作。格の違いを見せつけられた思いです。
intoxicate (C)木村陽平

昨年はTyme.(MAS)とのコラボ作を発表した電子音楽界のミューズと、活動拠点をベルリンに移して久しいchildiscの主宰者によるWネーム作品。しかも竹村にとっては2007年以来のリリースというトピック付きの本作は、端的に言えば童謡+ミニマル・ミュージックのような趣。だが、生楽器によるセピア色の調べのなかでツジコの歌が散っては収束する“Kirei”はTenniscoatsとテープの共作曲に近い素朴な味わいがあったり、奇妙な音色が整然と並ぶIDMと可憐な歌が戯れていたり、ツジコが奔放なラップを披露する楽曲も飛び出したりと、スタイルはさまざま。ノイズもアンビエントもフォークも内包しつつ、最小限の音数でテクノとエレクトロニカの狭間を行く、ピュアな電子ポップス集となっている。
bounce (C)土田真弓