ダニエーレ・ガッティ&フランス国立管による、ドビュッシーの大作「聖セバスティアンの殉教」
神秘的にして官能の和声、華やかな管楽器のファンファーレ
ガッティとフランス国立管だからこそ為し得た決定的名演!
ダニエーレ・ガッティと、彼が音楽監督を務めるフランス国立管によるドビュッシーの「聖セバスティアンの殉教」の登場。管弦楽版ではなく、語り・声楽を伴う版での録音です。神秘的で美しい和声、ミステリアスで異教的な要素を思わせる色彩、抒情、感情のひだに寄り添う劇性と官能的なハーモニーを併せ持った、ドビュッシーの魅力に詰まった作品です。
このドビュッシーの「聖セバスティアンの殉教」は、当時のセレブ的詩人、ガブリエーレ・ダヌンツィオが書いた4000行から成る聖史劇の詩のための付随音楽です。実際にすべての詩を朗読しながら上演すると4時間以上もかかる大作。しかしその中でドビュッシーの音楽は一時間弱分ほどしかないことから、今日では完全版で演奏されることはほとんどなく、このように音楽部分を抜粋してか、四曲の抜粋から成る交響的断章(「百合の園」「第一幕の法悦の踊りとフィナーレ」「受難」「よき羊飼い」)として演奏されています。ガッティ率いるフランス国立管、という夢のような布陣で、しかも語り手にはフランスの女優(映画「ピアニスト」で主演をつとめた)イザベル・ユペールを起用した豪華な上演のこのライヴ録音は、歓迎すべきものといえましょう。
(続く)
キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料(2012/03/22)
(続き)
ドビュッシーがこの作品の作曲の契約書にサインをしたのは1910年12月、詩が書き上がる予定日は翌11年3月、そして初演は5月、とすべてがギリギリの状態の中での契約でした。このような明らかに困難と思われる仕事を引き受けたのは、当時のドビュッシーの経済状態の困難さがあったから、とされています。リハーサルまでにピアノ譜を、そして本番までにオーケストラスコアを仕上げなければならないというギリギリの状態だったため、オーケストレーションの大部分を信頼おける友人、アンドレ・カプレに委ねています(もちろんすべてドビュッシーの細かなチェックが入っています)。さらに、契約時には、ダヌンツィオの四幕劇に対して、各幕への4曲の交響的前奏曲、三曲の舞曲、五声のマドリガル、寡婦たちの哀歌とフィナーレという音楽をつけることがうたわれていましたが、実際に出来あがってきたダヌンツィオのテキストは五幕でした。そんな中迎えた初演もトラブル続きで、さらに初演で主演をつとめたバレエ・リュスのダンサー、イダ・ルーヴィンシュタインはユダヤ人だったため、セリフのフランス語にも訛りがあったことを指摘されるなど、困難な状況でした。しかし、そんな状況での初演で、ドビュッシーは、自分が構想に描いていたような魅惑の和声の宮殿が彼の目の前に現れ涙した、という記録が残っています。この作品が、彼の芸術的発展における特別な存在であることは間違いないでしょう。
ドビュッシーの音楽語法の総決算的に様々な要素が濃密に詰まったこの作品を、ガッティとフランス国立管弦楽団は神秘性たっぷりに、ドビュッシーの和声の味わいと色彩を見事に汲み取り演奏しています。CDで聴いていても、セバスティアンの恍惚とした表情や、燃え盛る炭の上での舞い、受難の舞いが目の前にたちのぼってくるような力演となっています。
キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料(2012/03/22)