大好評のロト&レ・シエクル、ピリオド楽器演奏の次なるチャレンジは「和声学」の大家デュボワ作品集
ピリオド楽器によるストラヴィンスキーの「火の鳥」やサン=サーンスのオルガン付き交響曲が大絶賛のロト、SWR響との来日公演も大成功に終り、現在最も注目される指揮者のひとりとなりました。今後のリリース予定も充実していますが、まずは近代フランスの作曲家デュボワ作品集の登場です。デュボワは非常な多作家でしたが、CD自体が珍しく、またピリオド楽器であるのももちろん初の試みです。
テオドール・デュボワ(1837-1924)はパリ音楽院で作曲をトマに師事、マドレーヌ教会のオルガニストを務めるかたわら母校でも教鞭をとり、デュカス、マニャール、アーン、フロラン・シュミットを育て、1896年には院長となりました。しかし1905年にラヴェルがローマ大賞応募資格を無効とされたことが物議を醸し引責辞任。フランス音楽史上では悪役のイメージがついています。作曲家としては500を超える作品を残していますが、むしろ今日では音楽作品よりも、日本でも音大生必修だった「和声学」の著者として名を残しています。
このアルバムでは、デュボワの長い創作期の3つの時代を代表する3篇をとりあげています。初期1880年作の「フリチョフ序曲」は、「スカンジナヴィア伝説」の副題を持つ交響詩で、フリチョフ物語を描いています。劇的なアクセントやリズムを駆使してオーケストレーションの秘術を披露。中期1897年のピアノ協奏曲第2番はロマン派風の大協奏曲で、ショパンを思わすメロディに満ちた魅力的作。ヴァネッサ・ワーグナーは1880年製のエラール・ピアノを用いて薫り高き演奏を繰り広げます。後期1909年の十重奏曲は、弦楽五重奏と木管五重奏の組合せにより、フランクを思わすオルガン的な響きに満ちています。ガット弦と20世紀初頭のフランス製管楽器ならではの音色を存分に堪能できます。
ロトの演奏は相変わらず才気煥発。「フリチョフ」での強烈なリズム、ピアノ協奏曲でのロマン性、いずれもきびきびした推進力で表出。忘れられていたデュボワ作品からいきいきとした息吹を再現しています。
キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料(2012/03/22)
以前ご紹介したロト&レ・シエクルの最新盤はサン=サーンスの同時代人であり、和声や対位法の教本の著者として有名なデュボワ。その気難しそうなイメージとは裏腹に、曲中にふと現れる感傷的な曲想が彼の最大の魅力となっています。ピアノ協奏曲は充実した第1楽章に続く第2 楽章の感傷、第3 楽章の諧謔、第4 楽章の即興といずれも彼の力量が窺える優れた内容。十重奏曲はシャブリエにも似た優しさと繊細な書法が大変魅力的です。
intoxicate (C)桐島友
タワーレコード(vol.98(2012年6月20日発行号)掲載)