日本のキング・オブ・ロック、忌野清志郎のカヴァー・アルバム。トリビュートではなく、清志郎のソング・ライティングにスポットを当てた作品集。ヒット曲~隠れた名曲と、豪華アーティストによる、音楽史上最も創造力あふれるキング・オブ・コンピレーション! (C)RS
JMD(2012/03/08)
『KING OF SONGWRITER ~SONGS OF KIYOSHIROCOVERS~』は、ソングライター・清志郎の天才にスポットを当て、〈トリビュートではなくカヴァー・アルバム〉というキャッチコピーに制作者のこだわりを感じる全13曲。こうした作品の場合、〈人選〉〈選曲〉〈アレンジ〉の3点がチェックポイントとなるが、〈人選〉ではヴェテランたちに混じってandymori、住所不定無職、THE BOHEMIANSなどの若い才能による溌剌としたプレイが聴きどころ。〈選曲〉はそれぞれに納得のセレクトだが、志磨遼平の“世間知らず"と吉井和哉による“RAZORSAHRP・キレル奴"は、歌詞の内容が歌い手とぴったり合っていて特に感慨深い。〈アレンジ〉でおもしろいのは、アコギとヴォーカルのみで美しい空間を作り上げたUA、軽快なラグタイムに衣替えしたBEGIN、曲の半分をコーラスとクラップのみで押し切ったandymoriなどに、特別なセンスの良さが輝いている。さらにもう一つ、〈歌に気持ちが入っている〉というポイントもあるのだが、そこで浮かび上がるのが槇原敬之と一青窈で、原曲への愛と歌の上手さが切々と胸に迫ってくる。熱演快演の連発で、制作者の意図は十分に果たされたのではないか。
bounce (C)宮本英夫
タワーレコード(vol.343(2012年4月25日発行号)掲載)