コンポーザー/ギタリスト/シンガーのキーニョは、21世紀のブラジルが生んだハイセンスな語り部である。2004年頃よりバンドを組みサンパウロで活躍。インディペンデンデントでアルバムをリリースする傍ら、アドリアーナ・カルカニョット、ルイス・メロヂア、ジャルズ・マカレー、ホジェー、マルチナリア、イルドンといったMPBやサンバ・カリオカの実力者と共演し注目を集めていく存在へと成長。そのキャリア中でも常に創作意欲を漲らせ、完成させた傑作、この「O TEMPO SOA」だ。北東部の象徴的女性シンガー、エルバ・ハマーリョが参加したゴンザギーニャのリメイクM4を除き、すべてキーニョの楽曲。メロディーの中に独特の「溜め」を作り、より柔らかくヴィヴィッドな印象を植え付けるいずれも好旋律なのも然ることながら、その洗練されたアレンジも心躍る。シタールを意識したイントロから展開される絶品AORのオープニングから、アモーラ・ペラをフィーチュアした混声の妖艶さとエレピのメロウネスを解析させたファンク・ナンバーM2へ移行。そしてジャズ志向のブルージー・チューンM3へと至るクダリだけでも、このキーニョという才能の高さを思い知る。タイトル・トラックM5は、根底にある浮遊感とヘヴィ・ロックを交錯させ、そのテンションを中和させるようなしめやかなトラックM6、コーラスの妙でディープな世界を演出するM7の中盤も引き込まれる。そして、兼ねてより親交のあるマルチナリアをフィーチュアしたM8は、エレトロ・ボッサを基調にブレイクを効果的に配し、俄かに揺れ動くハイライト・トラック。ラストM10では、ロックに感化された自身のルーツの一端を、斜に構えたスタンスで演出し不可思議な余韻を残してくれる。
発売・販売元 提供資料(2012/03/08)
ブラジルから要注目のシンガー・ソングライターが登場。70sソウル~ファンクを下敷きにしつつも、ちょっと意外なセンスによるヒネリの効いたアレンジで、捉えどころのない独特のサウンドをクリエイトしているところが魅力。その繊細で中性的なヴォーカルやメロディーの美しさ&艶かしさも含め、ファンキーかつアーバンなサウンド・アプローチが聴ける80年前後のカエターノ作品に近い雰囲気を持った一枚です。
bounce (C)ダイサク・ジョビン
タワーレコード(vol.343(2012年4月25日発行号)掲載)
ブラジルに新たなるハイセンスな才能が開花! アドリアーナ・カルカニョット、ルイス・メロヂアといったMPBの実力者達と共演、カエターノ・ヴェローゾの繊細な歌声、アート・リンゼイの気鋭なアレンジを彷彿とさせる新世代シンガー・ソング・ライター、キーニョ。シタール風サウンド入りの極上AORや浮遊するエレピがメロウネスなファンク、そして色気に満ち、全編アンニュイに香るリリカルなメロディに、ただただ溜息が出るばかり!
intoxicate (C)真志田健次
タワーレコード(vol.97(2012年04月20日発行号)掲載)