N.Y.ブルックリン発、デレク・ミラー(Gr)アレクシス・クラウス(Vo)の男女2人組ユニット、スレイ・ベルズのセカンド・アルバム。彼ら特有のショック・バリューはそのままに、メタルやヒップ・ホップなどの影響も感じさせる野蛮サウンドで、新たな第2章をスタートさせる作品。 (C)RS
JMD(2012/01/26)
2作目にして早くも進化。おそらくライヴなどを通して結束を固めたうえで制作されたからなのだろう。NYはブルックリンに住む男女2人組、スレイ・ベルズのケミストリーがより濃密に絡み合って、おもしろい展開を見せはじめている。傍若無人に暴れるサンプラーやシーケンサーのマシーン音はもちろん健在だし、エレクトロニックなブツ切り音も満載だ。だが、今回はそれらよりもギター・サウンドが優位に置かれており、オープニング曲“TrueShred Guitar"のリフがデフ・レパード調だったり、“Crush"がゲイリー・グリッターなノリだったりと、〈メタリック〉どころかほとんど〈メタル〉。さらにアルバム終盤へと向かうに従い、まるでコクトー・ツインズかマイ・ブラディ・ヴァレンタインかと見まがうほどノイジーで美しいポップの桃源郷が開けて、アイデア一発ではなくじっくりと練り込まれた作品であるのが窺える。元アイドルというアレクシス嬢の歌メロの存在感も飛躍的に上昇。メランコリックなヴォーカルがギター・ノイズとせめぎ合う様はエキサイティングかつ耽美的で、よりソフィスティケートされたテクスチャーでもってウットリ酔わせてくれるのだ。まるで赤ん坊が闇雲に銃をブッ放しているかのようなスリルを楽しめたのが前作『Treats』(2010年)だったとすれば、狙いを定めて本気で撃ち抜きまくったのがこの『Reign OfTerror』。だから言ったでしょ?とでも言わんばかりに派手なアクション全開で、巧みな技を披露する。
bounce (C)村上ひさし
タワーレコード(vol.342(2012年3月25日発行号)掲載)
白いデッキシューズに深紅の血。ブルックリンの2人組、スレイ・ベルズのニュー・アルバム『Reign Of Terror』は今回もアートワークからして挑発的だ。デビュー作『Treats』では顔を削られたチアガールたちの写真がジャケットに使われ、どこか不穏なムードが彼らのパンキッシュでエレクトロな楽曲と結び付いていた。そして、その手榴弾みたいな破壊力を持つ作品は、M.I.A.が絶賛したことも手伝って大きな注目を浴びたが、強烈なインパクトを持つサウンドはヘタをすると身を滅ぼしかねない。そんななか、2人は過激さを追い求めたりはせず、前作以上に音楽性の幅を広げてきた。前作ではプロダクション担当であるデレク・ミラーの突発的とも思える奇抜なアイデアが際立っていたが、今回はソングライティングや全体のアレンジにより重点が置かれている。観客の歓声から始まって、強烈なエレクトロ・ビートとラウドなギターで構成されたトラックは、ロックのフォーマットをミニマムに圧縮したようなダイナミックさ。アレクシス・クラウスのヴォーカルは前作のようにエフェクトはかけられず、時としてコケティッシュで表情豊かな歌声をしっかりと聴かせてくれる。その結果、彼女のキャラやポップセンスが際立って、野蛮なキュートさが炸裂。それでいて、微笑みながら背中にナイフを隠しているようなエッジの鋭さも失われていない。M.I.A.よりエアロスミスと共演させたいスタジアム級のDIYサウンド。このしたたかさは侮れない。
bounce (C)村尾泰郎
タワーレコード(vol.342(2012年3月25日発行号)掲載)