MPBシーンに薫り高い名品を残してきた才人セルソ・フォンセカの出世作として知られるMPBのマスター・ピースが、作詞家のホナウド・バストスとのコンビで発表した2作目「パラディーソ」(1997年)であることは、ブラジル音楽ファンのコモンセンス。その「パラディーソ」に収録された原曲の音源を使い、2011年に新しい「リエーベ」セッションを大胆に被せて、まったく新しい側面を引き出した作品が出来上がった。それが、この「リエーベ・パラディソ」。セルソ・フォンセカ自らの肝入りで、オリジナルとはかけ離れた、一種のマジカルなサウンド・クリエイトに変貌を遂げたレパートリーは、97年作に収録された全11曲(本作#4では一部使用で繋ぎ合わせ)と2曲の2011年新録音で構成された、事実上のセルソ・フォンセカ最新アルバムだ。冒頭のタイトル曲では、特徴的なトランペット部分はそのままに、新ヴァージョンでセルソのヴォーカル、そしてサシャ・アンバークのシンセ・アレンジが、怪しい風情の一曲へと生まれ変わらせる。原曲でミルトン・ナシメントを迎えていた#4は、効果的なサンプリングを配したまったく異なるサウンド。原曲でジャキス・モレレンバウムのチェロ・フレーズが印象的だった#11では、カシンが新たにプログラミングを施すという奇抜な凄さ。#2、#7、#10では、原曲には無いヴォーカル・パートとして、ナナ・カイーミ、ルイス・メロヂア、サンドラ・ヂ・サーを起用するというハイライト。そして、元の「パラディーソ」には収録されていない2曲にも注目。アドリアーナ・カルカニョットのレギュラー・セッションが、やはりセルソの傑作「ソルチ」収録曲からカバーした#8、ラスト#12は「スローモション・ボサ・ノヴァ」収録のタイトル・トラックをセルソ、ホナウド、そしてジョアン・ドナートのピアノという夢のセッションで繰り広げている。セルソ・フォンセカの楽曲が持つ不思議な多面性を、原曲からは想像もつかない手法で再構築してみせた異色作。
発売・販売元 提供資料(2011/10/28)
ブラジルの才人セルソ・フォンセカが作詞家のロナルド・バストスとのコンビで発表した2作目であり、MPBの名盤としても知られる『Paradiso』(97年)。今作は、その音源と新録音源を再構築/再編集するという異色の一枚だ。ポップ職人気質が炸裂した大胆な別解釈によって、どの曲も原曲とまったく違う表情に変わっていて、いわゆるリミックス盤というよりも、純粋に新作として楽しめる内容になっている。
bounce (C)ダイサク・ジョビン
タワーレコード(vol.340(2012年1月25日発行号)掲載)