マーラー歿後100周年についによみがえる
レヴァイン&ウィーン・フィル、マーラーの「復活」1989年ライヴ
レヴァインにとって2種目となるマーラーの「復活」は、イスラエル・フィルとの同曲のライヴより半年ほどのちの1989年8月19日に、ザルツブルク音楽祭でウィーン・フィルを指揮して行われた演奏会の模様をライヴ収録したものです。
■若きレヴァインとザルツブルク音楽祭
このライヴよりひと月ほど前の1989年7月16日に、それまで30年以上に亘りザルツブルク音楽祭の“帝王”として影響力を保持していたカラヤンが世を去っています。1973年よりメトロポリタン歌劇場の首席指揮者に任命され、1976年には同歌劇場の音楽監督に就任したレヴァインは、1970年代半ば以降、カラヤンよりザルツブルク音楽祭におけるオペラハウスとコンサートの両面で広範囲に重要な仕事を任されるようになります。レヴァインは、モーツァルトのオペラ・シリーズをスタートさせて、1976年に「ティトーの慈悲」、1978年に「魔笛」、1983年に「イドメネオ」、1986年に「フィガロの結婚」のプロダクションで好評を博すと同時に、1980年から3年連続でオッフェンバックの「ホフマン物語」、1987年と88年はシェーンベルクの「モーゼとアロン」を上演しています。
■“ウィーン・フィル”とのザルツブルク音楽祭コンサート・デビューを飾ったプログラム
そもそも1975年にレヴァインはロンドン響を指揮してザルツブルク音楽祭のデビューを飾っていますが、ウィーン・フィルとの顔合わせでオーケストラ・コンサートが初めて実現したのは1977年8月21日のことでした。このときレヴァインは34歳の若さでしたが、モーツァルトのピアノ協奏曲第12番を自らの弾き振りで演奏した後のメイン・プログラムこそが、マーラーの「復活」でした(独唱はバーバラ・ヘンドリックスとジェシー・ノーマン)。この1977年以降、レヴァインはウィーン・フィルとともに、シューマンやシューベルト、ブラームスのオーケストラ作品を次々と取り上げていきますが、1979年にベルリオーズの「レクィエム」、1981年にハイドンの「四季」、1982にストラヴィンスキーの「エディプス王」、1984年にメンデルスゾーンの「エリヤ」、1987年にハイドンの「天地創造」、1991年にベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」といった声楽を伴う大曲を継続的に取り上げていることからも、じきに音楽祭に欠かせない存在として目を瞠る活躍をみせていたことがわかります。
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発売・販売元 提供資料(2011/08/11)
■レヴァインとウィーン・フィルによるマーラーの交響曲演奏
「マーラー指揮者」としてのレヴァインのキャリアを一躍不動のものとしたのが、1974年から1980年にかけて、シカゴ響、フィラデルフィア管、ロンドン響と3つの名門オケを振り分けておこなった、番号付きの8つの交響曲のセッション・レコーディング。レヴァインにとって、マーラーの交響曲は名門ウィーン・フィルともぜひとも取り上げるべきレパートリーだったのでしょう。ザルツブルク音楽祭では上記2度の「復活」のほかに、レヴァインはウィーン・フィルを指揮して、1983年には第7交響曲を演奏しており、さらにウィーン・フィルとはムジークフェラインザールでもマーラーの交響曲を取り上げ、1982年5月に第6番、1989年6月に第2番、1990年に第3番を演奏していました。
■ウィーン・フィルと12年ぶりに臨んだ「復活」ザルツブルク音楽祭再演
1965年から1999年のあいだに、ザルツブルク音楽祭でウィーン・フィルはマーラーの「復活」を5度演奏しています。ちなみに、レヴァイン以外の顔ぶれとは、クラウディオ・アバド(1965年。このときがアバドのザルツブルク音楽祭デビュー)、ロリン・マゼール(1993年)、サイモン・ラトル(1999年)の3人です。こうしてみるとレヴァインが、1977年と1989年と2度に亘り「復活」を指揮しているのはやはり異例のことであり、レヴァインの特別な意気込みがそのまま窺い知れるという以上に、1989年の演奏内容もまたウィーン・フィルの長きにわたるマーラー演奏の伝統の一部にしっかりと位置づけられるものであるということがあらためて実感されます。絶賛を浴びた一連のセッション録音の記憶もたしかに、集中力の高さと鮮烈でメリハリの利いた音楽運びはここでも絶好調で、当時、ミュンヘン・アーベントツァイトゥング紙、ウィーンのディー・プレッセ紙の批評でも激賞されていました。
■名メッツォを再起用、ルートヴィヒが歌う「原光」
ここでも第4楽章「原光」を歌うメッツォはクリスタ・ルートヴィヒ。同じレヴァイン指揮のイスラエル・フィル盤に続いての起用で、ほかにも1975年のメータ盤、1987年のバーンスタイン盤と、ゆたかな経験に裏打ちされた深々とした歌唱はもはや孤高の境地ともいうべきもので、この場面はひときわ感動的。対するソプラノは、可憐で清楚な歌声の魅力と、なにより日本では1986年以来テレビコマーシャルの効果で爆発的人気の絶頂にあったキャスリーン・バトル。バトルは、1982年のスラトキン指揮セントルイス響のセッション録音、同じく1982年のメータ指揮ニューヨーク・フィルのライヴ録音でも同パートを歌っていました。
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発売・販売元 提供資料(2011/08/11)
クリスタ・ルートヴィヒをザルツブルグで聴く!という目標は、8月27日のリーダーアーベント(チャールズ・スペンサーのピアノ、祝祭大劇場)でやっと実現したわけですが、このレヴァインのウィーンフィルは、私にとって因縁のマチネーであります。
で、CDですが、音がもう少し良かったらな、、とため息をつきました。