才人ザック・コンドンを中心としたプロジェクトによるサード・アルバム。本作には『Gulag Orkestar』の東欧/バルカン、『The Flying Club Cup』のフランス、『March of the Zapotec』のメキシコ、といったコンドンが訪れた土地との分かりやすい影響関係は認められないが、表面的なスタイルのみに捉われず、自身の内面に沈潜する濃密なメランコリーを抽出していくかのような楽曲に、コンドンのソングライターとしての成熟を感じさせる紛れもない傑作。
発売・販売元 提供資料(2011/09/14)
ベイルートの人気の秘密は、オーケストラル・ポップなフォーク・サウンドに持ち込んだ異国情緒——初作『GulagOrkestar』の東欧、2作目『The Flying Club Cup』のフランス、EP『March Of The Zapotec』のメキシコなど——にあったわけだが、4年ぶりとなるこの3作目はそういう演出に頼らず、自分たちのなかで脈打つメロディーをみんなに聴かせたい、という思いが込められているようだ。中心人物のザック・コンドンによると、レディオヘッドやニュートラル・ミルク・ホテルの影響のもと、曲を作りはじめた10代半ばに回帰してみようとのことらしい。オーケストラル・ポップという意味で大きな変化はないものの、これまで以上にメランコリックなメロディーとジェントルな歌声の魅力が沁みる作品だ。
bounce (C)山口智男
タワーレコード(vol.336(2011年9月25日発行号)掲載)