いわゆる〈海外ドラマ〉好きでもなければ、コテコテなアーティスト写真を見ただけで軽く引いてしまうかもしれない。逆に、好きな人はもうとことん好きなのだろうから、そういう人たちに向けていまさら何も新しい情報はありませんが……とにかくここで紹介するヴォーカル・グループ、ウォーブラーズが凄いのである。2010年に放った“TeenageDream"が猛烈なダウンロードを記録して全米8位まで急浮上し、ここで紹介するアルバムもすでに全米2位を獲得している。そんなアーティスト知らないって? そういう人も多いだろう、合唱団をテーマにした学園音楽ドラマの「glee/グリー」に登場する架空のグループだから(チャートの数字は本当ですよ!)。ドラマでは基本的に新旧ポップスのカヴァーがシチュエーションに応じて披露されるので、件のヒットももちろんケイティ・ペリーのカヴァーでありますよ。まあ、白々しい話は置いといて、シリーズ中に登場するエリートの私立男子校=ダルトン・アカデミーのグリークラブという設定で現れたのがウォーブラーズ。メイン・キャストたちの通う学校とはライヴァル校の関係にあたり、本作『Glee: The Music Presents The Warblers』はそんな彼らが番組中で披露した曲を集めた、つまりはカヴァー・アルバムだ。が、彼らが凄いのはセールスだけの話じゃない。ダレン・クリスの演じるリード・シンガー=ブレイン・アンダーソンを中心にした楽曲の完成度が異様に高いのである。日本でもあまりポジティヴではないブームがあったりしたし、安易なカヴァーに対して偏見のある人もいるだろうが、その類いの作品が古典的な名曲を(あまり成功していない)モダンなアレンジで歌ったものが多いのに対し、ウォーブラーズの美点は、最新~最近の曲をトラディショナルなアカペラの合唱スタイルで聴かせていることにある。先述のケイティ曲を筆頭に、ピンク“Raise Your Glass"やトレイン“Hey, Soul Sister"、あるいはキーン“Somewhere OnlyWe Know"といった(その時点での)最新ヒットを自信たっぷりなハーモニーで披露してくれるのだからたまらない。楽曲本来の魅力を浮き彫りにする……と言ってしまうと陳腐だが、実際にそれだけのことでどれだけの成果を上げているかはぜひ聴いてもらうしかないか。ヘイ・マンデイの“Candles"や日本盤ボーナス・トラックのブラック・キッズ“I'mNot Gonna Teach Your Boyfriend How To Dance WithYou"なんかを朗々と歌い上げる様子の格好良さは、例えば日本でも話題になったアミーアのような良質のヴォーカル・アルバムに通じるものだろう。もちろんロッド・ステュワート“Do Ya Think I'm Sexy?"やデスチャの“Bills, Bills, Bills"といったクラシックを小憎らしく披露するブレインも最高。もちろんドラマを観たほうがおもしろいはずだけど、そうでなくてもこの謎のパワーは伝わるはずだ。
bounce (C)出嶌孝次
タワーレコード(vol.336(2011年9月25日発行号)掲載)