「深く、魔法のような音楽に対する直感」(ハービー・ハンコック)、「シナトラに匹敵する歌唱法」(ウェイン・ショーター)など、大御所を虜にしたその歌唱力と、類い稀なる美貌。新人ジャズ・ヴォーカリストの登竜門“セロニアス・モンク・インターナショナル・ヴォーカル・コンペティション”で2004年に優勝し、一躍注目浴びた女性ヴォーカリスト、グレッチェン・パーラートの2011年作。ピアニストにテイラー・アイグスティ、ベースはデリック・ホッジ、ドラムにケンドリック・スコットを配したメイン・バンドに、ダイナ・スティーブンス(sax)、アラン・ハンプトン(b)がゲスト参加。コ・プロデューサーとしてロバート・グラスパーも参加しM10では、フェンダー・ローズをプレイ。オリジナル曲の「Winter Wind」「Circling」「The Lost and Found」では、自身の作詞・作曲の能力を遺憾なく発揮している。他に、シンプリー・レッドの大名曲「Holding Back The Years」、メアリー・J・ブライジの「All That I Can Say」のポップス・カヴァーや、ウェイン・ショーターの「Juju」は自身が作詞した歌詞を載せてカヴァー。
発売・販売元 提供資料(2011/04/27)
ニューヨークのジャズシーンで、近年最も注目を集める歌姫グレッチェン・パルラト。アンサンブルの一員として、音楽を創ることのできる数少ないシンガーである。古くはビリー・ホリディとレスター・ヤングのように、彼女は共演者との音楽的蜜月を求めてやまない。少なくとも彼女は、そういうヴォーカリストこそが、〈ジャズ・ヴォーカリスト〉だと考えているようである。天性の才能か、見事なバランス感覚で、ナチュラルでオーガニックなヴォーカリストとしての魅力を保ったまま、ニューヨークで活動を共にする同世代の共演者達の次世代サウンドを着こなせるさりげなさは、ワン・アンド・オンリーな才能と言えるかもしれない。この春、この作品とほぼ同時期にリリースされた若手トランペット奏者アンブロース・アキンムシーレイの初リーダー作に収録されている美しいバラード《Heyna》という曲がある。彼女が歌詞をつけ、見事なウィスパーヴォイスでフェミニンに仕立てたヴァージョンもぜひ聴いて頂きたい。
intoxicate (C)稲田利之
タワーレコード(vol.93(2011年8月20日発行号)掲載)