インスト／ジャズ大国ブラジルからは、次々と素晴らしい若手アーティストが登場する。この“プロジェト・パルチード・アルト”もそんな若手注目株の1つ。近代首都ブラジリアを拠点に活躍する、ガット・ギター・ギター2本に、ウッドベース、ドラムというシンプルなカルテット編成のジャズ・ブラジリアン・コンボである。“パルチード・アルト”とは、伝統的なサンバのシンコペートの1つであるが、ここではメンバー4人の調和を意味する。その冠名に違わない見事なアンサンブルと、ギターをメインにしたソロ・インプロでの主張性は、若手とは思えないほどの堂に入った快演。テクニックやスピード、表層的なテンションだけにとらわれない奥行きのあるサウンドは、ジャズ・ブラジリアン・グループとしてもかなりの高得点。さらに特筆は、彼らの演じるレパートリーの素晴らしさ。ジャズ・ボサノヴァの定番として1960年代に多くのミュージシャンが必ず披露したと言われるジョビンのM1、カルロス・リラのM2、再びジョビンのミディアム・ワルツ名曲M7、そしてラストもジョビン。さらには、チト・マヂの代名詞と語られるM10と、全盛期のボサノヴァ・シーンを彩ったレパートリーへの傾倒が、先ずファンの興味を惹く。いずれも原曲の美しさと、表現者としてのグループのポリシーが織り成すサウンドである。そしてアルバム最大のハイライトは、エルメート・パスコアルの代表曲M4「ベベー」、そしてエドゥ・ロボ傑作M9「カーサ・フォルチ」のカヴァー。演奏者によって様々なスタイルのテイクが残るこの2曲への挑戦と、スタイリッシュで華麗なアレンジこそ“パルチード・アルト・プロジェクト”の真価であり、すべてのブラジル・インスト・ファンを魅了するものとしても過言ではない。グループのオリジナル楽曲も交えた全12トラックを聴き終えた頃には､この若くして完成されたグループの魅力を存分に堪能することとなろう。底知れぬ層の厚さとパワー＆センスを秘めたブラジリアン・ジャズの今。その一端を垣間見ることが出来る逸品。
ボンバレコード

発売・販売元 提供資料 （2011/01/14）