ここ数年アラブ歌謡が注目されているが、ついに真打ち登場といった感じだ。ファイルーズはまさに〈アラブ歌謡の女王〉と呼ぶに相応しい存在。1935年にレバノンで生まれたファイルーズは本作の録音時点で75歳なのだが、その歌声は健在、ほとんど衰えを感じさせないというのがすごい。作曲・アレンジの大半は息子のジアード・ラハバーニが手掛けているが、ジャズやボサ・ノヴァなども導入。超初期の代表曲の再演もあり。
intoxicate (C)篠原裕治

アラブ歌謡界のリヴィング・レジェンドが御年75にして8年ぶりのニュー･アルバムを上梓。これだけでも十二分に事件だが、内容がまたスンバラしい！　80年代以降の彼女が追及してきたジャズやボサノヴァ、欧米のポップスを採り入れた親しみやすくも高度な音楽性、艶っぽさをまったく失わない美声、アラブ特有のコブシ回し……すべてが全盛期並みの水準を誇っている。何と優雅な傑作なのだろう！
bounce (C)田中幹也