最高のバイーア系アフロ・ルーツ・サンバ歌手、マリエーニ・ヂ・カストロの2010年アルバム。マリエーニは、バイーア伝統のアフロ・ルーツ・サンバ、そしてさらに北東部地域のリズムなどを、力強い歌声で歌う若手実力派女性シンガー。2004年にリリースしたファースト・アルバム『Abre Caminho』は、多くのサンバ・ファンの共感を得た。その後も現地では精力的なライブを重ねるなど着実にキャリアを積み上げ、大物のライヴへゲスト・ヴォーカルとして招かれるなど、その実力を遺憾なく発揮してきた。いわゆるサンバ・カリオカ(リオのサンバ)、殊にラパ系と括られる“サンバ・ノヴァ”シーンを意識しつつも、それとは一線を画する濃いラインで活躍する女傑だ。本作は、バイーアの名門テアトロ・カストロ・アウヴェスでのライヴ録音。ファースト・アルバムからのレパートリーを中心に、バイーア~ノルデスチのフォルクローレに根ざした名曲群をパーカッシヴでどっしりとした演奏で披露。ノルデスチの伝統リズムであるマラカトゥとサンバをミックスさせたようなM2、サンバの根源的なリズム=パルチード・アルトをベースに、分厚いホーン隊が力強くカウンター・メロディを歌うM3、チンバウによるパーカッションのイントロからバイーアのサンバ=サンバ・ヂ・ホーダへと展開するM10など、いずれも素晴らしい。ブラジルの持つ多種多様な音楽性が、荒々しくも見事に統率されたパフォーマンス、そしてマリエーニの大地のような歌声は、真の通ったインタープリターであることを革新させるような、リアリティのある魅力で溢れている。そして本作最大のハイライトが、かのホベルタ・サーが2010年作品で取り上げるなど再評価される偉大なバイーア・サンバの作曲家、ホッキ・フェレイラのゲスト参加したラスト・トラック。このエンディングにこそ、マリエーニがキャリアを通じて体現してきた伝統的なブラジル音楽の持つダイヤモンドのような美しさが、最も輝く瞬間である。
発売・販売元 提供資料(2010/11/04)
2010年を締め括る傑作サンバ・アルバムが到着。ベッチ・カルヴァーリョやダニエラ・メルクリとの共演歴も持つバイーアの実力派女性シンガーの2作目で、地元での実況録音盤。これがもう突き抜けるような開放感&高揚感に溢れており、笑顔にならずにはいられない。ノルデスチのリズムを基調とした躍動のサンバ・サウンドとド迫力のぶっとい歌声に煽られて、観客のレスポンスも終始最高潮の至福のライヴだ。
intoxicate (C)田中幹也
タワーレコード(vol.89(2010年12月20日発行号)掲載)